【美容室の独立開業】失敗しない店名の付け方とコンセプトを伝える考え方
(イラスト:飯島由敬)
美容室や理容室の独立開業に向けて準備を進める中で、必ずぶつかるのが「店名」をどうするかという課題です。
実は、店名は多くの開業者さん達が思う以上に、サロンの成功を左右する非常に重要な要素の一つなのです。
今回は、開業者の皆さんが後悔しない、そしてお客様に長く愛され続ける店名の付け方と考え方について、プロの視点から詳しく解説します。
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失敗しがちなケース:安易な店名付けのリスク
美容室や理容室の開業に限らず、どのような業種のお店にも必ず名前があります。
しかし、これまでの私の経験上、多くの開業者さんが「なんとなく」「適当に」といった感覚で、安易に店名を決めてしまっているのが実情です。
店名は人の名前と同じで、後から簡単に変えることが難しいものです。本来であれば、しっかりと想いを込めて命名したいところですが、開業計画においてはやるべきことがあまりにも多く、大量のTODOに追われる中で、どうしても「店名は、まぁこれでいいか…」と行き当たりばったりで決めてしまう方が少なくありません。
しかし、店名とは、未来のお客様にとっても、何よりご自身にとっても、長きにわたり親しみ深く付き合っていくものです。だからこそ、安易なネーミングで済ませるのではなく、しっかりと魂を注入した素晴らしい店名にするべきです。
実際の経営が始まり、日々たくさんのお客様と出会っていく中で、必ず誰かしらにこう聞かれるはずです。
「どうしてこの店名にしたの?」
その際、「なんとなくカッコいいかなと思って…」と答えてしまっては、お客様も「へぇ、そうなんだ」と思うだけで、何の印象も残りません。
長々と語る必要はありませんが、最低でも30秒程度は店名の由来を語れるようにしていただきたいのです。
仮にそれがダジャレ的な要素を含んでいたり、オリジナルの造語であったりしても構いません。
ご自身の分身とも言えるお店の名前を、お客様にしっかりと説明できれば、それは必ず口コミとなって大きく拡散されていくことでしょう。
「なぜこの店名にしたのか?」という
“なぜ”の部分こそが、お店の目指す方向性
つまり「コンセプト」に繋がる非常に重要な要素となります。
店名の理由をしっかりと語れるだけの意味合いを、必ず店名に込めるべきなのです。
コンセプトを反映する:店名に「開業者の想い」を込める
開業者がお客様に向けて店名の由来を語るためには、お店の目指すべきコンセプト、つまり「社会的役割」が含まれていることが理想です。
店名からその想いが彷彿とさせられるものであれば、言葉の重みは格段に増します。
多くの開業者がやってしまいがちなのが、「単にこの響きが好きだったから」「昔からこの名前にしたかったから」「好きなマンガのキャラクター名だから」といった理由で決めることです。こうした類の店名では、どうしても想いが薄っぺらくなってしまいがちです。
コンセプトの要素を含んだ素晴らしい店名にするためには、開業者からお客様への貢献、すなわち「どのような社会的役割を果たすサロンなのか」を明確にすることがポイントです。それが定まれば、おのずとキーワードは絞り込みやすくなります。
例えば、
「中高年女性の美の復活を徹底的にサポートし、若返りをお手伝いすること」を社会的役割とするサロンであれば…
【アンチエイジング、復活、生まれ変わり、再生、変身】などがキーワードになります。
あるいは、
「自分の時間が作れないほどハードに働くビジネスマンのために、頭皮や髪の健康を促進し、疲れを軽減して明日の仕事への活力を応援すること」を社会的役割とするサロンであれば…
【健康、応援、ケア、リフレッシュ、癒やし、パワーアップ、ねぎらい】などがキーワードとして浮かび上がります。
このように、目指す方向性によって導き出されるキーワードは全く異なるのです。
サロンが果たすべき社会的役割や貢献からキーワードを導き出し、そこに自分自身の名前を組み合わせたり、お店のデザインスタイルを彷彿とさせるイメージを掛け合わせたりしてみてください。
開業者ご自身が永遠に愛し続けられるような店名を、そうして創り出していけば良いのです。
音象(おんしょう)を意識する:音の響きが与える印象と電話対応
さらに、店名を決める上でもう一つ重要なポイントがあります。
それは「音象(おんしょう)」です。
読んで字のごとく、発音の響きから感じ取れる印象のことです。
仮に、先ほどの「アンチエイジング」を主力にした女性向けサロンを目指すのであれば、やはり女性的で優しい音の雰囲気を持つ店名がふさわしいでしょう。サ行、ナ行、ハ行、マ行などは、音の響きに柔らかさや優しさを感じさせつつ、ハイセンスな印象を与えることができます。
一方、後者の「多忙なビジネスマンを応援するサロン」はいかがでしょうか。バリバリ働く男性に向けたお店ですから、前向きで力強く、元気を与えるような音の印象を持つ店名が良いでしょう。 カ行、タ行、ラ行、さらには「濁音」付きの音が効果的です。
特に男性は濁音の響きに惹かれる傾向があると言われています。
ゴジラ、ガンダム、ゴレンジャー、ライダー、ガレージなど、男性の心をくすぐるネーミングには濁音が多く使われています。こうした濁音を含む店名は、自然と力強く頼もしい印象を与えます。
また、音象を検討する上で忘れてはならない実践的なチェックポイントがあります。
それは、日々の電話応対における「第一声」です。
「お電話ありがとうございます!美容室◯◯◯(バーバー◯◯◯)です!」
この◯◯◯の部分が、
店側にとって「発音しやすいか」
お客様にとって「聞き取りやすいか」
という双方の視点からのチェックも非常に重要です。
SEO対策の落とし穴:汎用語を使うとネット検索で不利になる?
そしてもう一つ、現代ならではの注意点があります。
店名を決める際、単に「楽しい」を英語にして「ENJOY(エンジョイ)」、「ありがとう」をスペイン語にして「gracias(グラシアス)」のように名付けるケースがよくあります。
しかし、これをネットで検索した時、どのような検索結果が表示されるか想像してみてください。
おそらくGoogleやYahooの検索結果の上位は、サロンの情報ではなく「スペイン語で“ありがとう”という意味です」といった辞書的な説明で占拠されてしまうでしょう。
昔はこうした店名の付け方も多かったのですが、ネット検索が当たり前になった現代においては、集客面で大きな不利になり得ます。お客様がサロンを探そうと検索したのに、言葉の意味ばかりが出てきて戸惑わせてしまうのは避けたいところです。
このような検索エンジンの特性を考慮すると、「世の中に存在しない造語でネーミングする」というアプローチも大いに一考の余地があります。
また、同じ地域に同業種の同じような店名があったり、発音が似ている店名があったりするだけで、ご自身のお店の独自性は薄れてしまいます。
簡単な例として、先ほどの「英語の“たのしい(ENJOY)”」と「スペイン語の“ありがとう(gracias)”」をミックスしてみましょう。 良し悪しは別として、例えば「Encias(エンシアス)」という造語にしたとします。
これなら類似する店名はほぼ無くなり、お客様が検索した際に一番上に表示される確率が飛躍的に高まります。
このように、誰もが知る一般的な言葉や、世界中で使われている特定の単語をそのまま店名にすることの「ネット検索上のリスク」をしっかりと理解した上で、ネーミングを検討するようにしましょう。
まとめ:愛されるサロンになるための店名付け4つのポイント
いかがでしたでしょうか。
今回は、サロンの顔となる店名の付け方と考え方について解説しました。
最後に、重要となる4つのチェックポイントを振り返っておきましょう。
「社会的役割=コンセプト=お店が目指すこと」が店名から感じられるか
お客様の受け取る感覚を想像し、「音象(おんしょう)」を考慮しているか
一般的な汎用語をそのまま使い、ネット検索で埋もれるリスクを回避できているか
何より、開業者ご自身がその店名を最も愛し続けられるほどお気に入りであるか
店名は、ある意味で一生付き合っていくものです。
サロン経営における店名の重要性をしっかりと理解し、決して安易に決めることなく、時間をかけて考え抜いてください。 開業者ご自身はもちろん、未来のリピーター客にも深く愛される、素晴らしい店名にしましょう。
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