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【実例解説】1人で美容室開業するために、必要な開業資金は?開業総額、明細内訳、資金調達方法まで実例から解説します!

一人でお店を運営していく、いわゆる「ひとり美容室」で開業したいと考える美容師さんは多いですね。ビーエイチでも「ひとりで運営する美容室を開業したい」と相談を受けることがよくあります。

「ひとり美容室」を考えている方で、最も気になるのは「開業にどのくらいお金が必要なのか」ではありませんか?

今回は、実際にビーエイチでサポートを受け「一人運営の美容室」を開業された方の実際の開業事例をもとに、「ひとり美容室の開業資金」についてご紹介します。

「ひとり美容室」の開業総額実例

それではまず、過去の実例からの平均データとして開業全体でいくらかかったのかを確認してみましょう。

※過去の複数の実例をもとにした平均データです。額面はあくまでも参考の目安程度とお考えください。

開業総額の明細内訳&解説

①「不動産物件取得費」

まず、不動産取得の為の費用の中には、敷金(または保証金)、礼金、不動産会社の仲介手数料、各種保険料、そして初月の家賃として前家賃を、最初の初期投資費用として一括支払いする必要があります。

出店地として選んだ不動産物件の地域や物件そのものの規模により、どれぐらいの費用になるかは様々です。出店地によっては50万円以下ですむこともあれば、東京の青山や表参道のような都心部の場合、それ以上の費用がかかることもあり、中には店舗面積が非常に小さいにも関わらず200万円以上必要となる物件も存在します。逆に都心部から遠く離れれば、面積が非常に広くても非常に少予算で物件を確保することもできたりします。

 

②「開業準備金」

ここでいう開業準備金というのは、開業者が大変見落としがちな予算組であり、非常に細々した出費の数々を指します。代表的なものをご紹介します。

A.『買付備品』

完成した店舗に設置する家具や家電、植栽などの装飾物、掃除用具、消耗品、文房具、小物など、自身で調達すべき買い物の予算。

B.『材料・道具仕入』

美容室、理容室では施術するための道具としてハサミなどは、多くの場合個人ですでに所有していることが多いようですね。しかし、ドライヤーなどを含め、ハサミ以外の施術道具やシャンプーやトリートメント、カラー剤などの薬液商材、施術する際に手元に転がしておくワゴンなどは、今までは在籍していた職場にあるものを使っていたはずです。開業するとなれば、これらをすべてまとめて仕入れる必要があります。これら、お店が機能するほどの量の物品をすべて一気に仕入るには、開業者が想像している以上の予算が必要となります。特に一人美容室であったとしても、平均的には40万円〜60万円ぐらいの予算がかかってしまいます。

C.『広告宣伝費』

開業して新たなお店をオープンさせる以上、少なからず広告宣伝費として用意すべきものがあります。オープンの告知チラシ、名刺、ショップカード、ポイントカードなどの紙媒体の制作費及び印刷費。そしてホームページの制作費も必要となりますね。特にホームページの制作費は請負業者によっては初期費用が不要なサービスも多くありますが、開業時に初期費用がかからず済んだとしても、その分は毎月支払いの月額費用を高額にする要素となり、これは結果的に毎月の収支バランスに関与し利益率を下げることになるので慎重な判断が必要な要素となります。

D.『各種保険』

開業した以上、今後、経営していく上での備えとなる、クレーム対応などの保険加入費も検討しておくべき要素です。世の中の数ある実例において、こうした保険を開業時に加入していなかったことにより、店舗オープン後に泣きを見たという実例もよく耳にするものです。特に開業初期のまだ運営が軌道に乗っていない時期に見舞われるトラブルにより不測の出費を余儀なくされると、最悪の場合、先々の経営が不能に陥るようなこともありうる話です。特に一人での経営をしていくお店であるなら、なおさら備えに対する関心は重要な要素と捉えておきましょう。

E.『生活費』

開業するには今まで働いていた職場を退職しなければなりませんが、店舗がオープンする直前まで旧職場で働き続けることはおすすめできません。お店のオープン準備に必要な様々なやるべきことが大量にあるため、開業直前の1ヶ月半程度は、確実に退職して準備期間に割当る必要があります。この場合、実際にお店が開業するまで、すなわちまだ店舗が稼働していない、働かない空白の1ヶ月半という期間の生活費が必ず必要となるわけです。多くの場合、給与というのは実際に働いた月末に手に入ることが多いですね。こう考えると開業準備で働かなかった1ヶ月間の給与相当の額面は、それこそ開業直後に必要となるお金です。これが無いということは、開業初月のお金が不足することを意味します。多くの開業者が見落とす要素がこの1〜2ヶ月間の給与相当の生活費不足なのです。

F.『カラ家賃』

開業の出店対象となる不動産物件契約をしてから、実際にお店がオープンできるまでの期間は、どんなに急いでも、公的融資の申請や店舗工事期間を含めると2ヶ月〜3ヶ月かかってしまうものです。しかし、不動産契約直後から家賃発生してしまうと、店舗が完成するまでのこの期間は、ただ流出するだけの家賃支払いとなるわけです。融資や工事がスムーズに進んだならまだしも、融資も工事も手こずったりして想像以上に時間を要してしまった場合は、無駄な家賃流出は3ヶ月以上に及んでしまうこともあります。これらの「カラ家賃」も若干多めに想定しておく必要があります。

G.『その他』

開業者の事情によっては、開業を機に、現在住んでいる自宅の引っ越しを同時に予定するような事例もあります。これら引越し費用の予算を甘く見ていたことにより、結果的に開業総額不足に陥って混乱した開業者の事例も時折見かけました。こうした「引越」に限らず、人それぞれ、開業の直接的な予算組以外の出費費用が必要となるものです。開業とは別の予算とはいっても、こうした要素が開業を根底から揺るがずことに繋がるので、開業予算であっても、個人のプライベート予算であっても、開業時にはひとくくりでバランスを追求する必要があるのです。

<まとめ>

このように②の「開業準備金」というのは、沢山の開業事例から導き出せる平均額というのが無く、とにかく人それぞれなので、非常に悩ましい予算組なのです。多くの場合、最終的に開業予算が足りなくなり混乱に陥る原因のトップが、この「開業準備金」で挙げたA〜Gの要素であり、これらの想定不足が失敗原因の7割以上の鍵を握っているといえます。失敗しないためにも、これら大量な買い物を含めた出費リストを作成し、慎重すぎるぐらいの想定が重要と考えましょう。

 

③「運転資金」

運転資金とは、ずばり、お店のオープン時に手元に残しておくべき「現金」のことです。実際の開業実例の多くには、この「運転資金」をほとんど残すことができず、文字通り無一文の状態で、経営をスタートしている危険な事例があまりにも多いのです。実はその原因の多くは、一つ前の②「開業準備金」の中に想定しておくべき大量の出費項目の見落としが招いていることが殆どです。

「運転資金」は、開業初期の半年間前後の、運営がまだ軌道に乗っていない、とても厳しい期間を乗り切る為のもの、支払い要素の為の余剰金として絶対に残しておくべき“お金そのもの”を指すのです。お店の大小に限らず必ず、毎月支払額の2ヶ月分を絶対に下回らないように確保しましょう。すなわち、毎月の月間経費(家賃、光熱費、返済、給与、その他経費の合計) ×2倍です。

もちろん、運転資金というのは多く残した方が安心ですが、誰でも開業予算には上限があるわけですから、運転資金を多く確保しすぎると、その分、③以外の出費要素に予算が回せなくなり、必要な買い物ができなくなってしまいます。収支計画上、人それぞれ出費額は異なるので確保すべき運転資金額も当然異なります。しかし、どうであれ最低でも「毎月支払額の2か月分の“現金”は開業スタート時点で残しておくことを鉄則と考えましょう。

 

④「理美容機器」

理美容機器とは、カット施術椅子や、シャンプー台、ローラーボールやデジタルパーマなどの各種促進機、ボイラーなど、大きな物品である機械類の購入予算となります。中にはこれらの機器類を中古で調達する人もいますが、新品を調達する際は、ディーラーなどを通して購入することになります。こうした理美容機器は、理美容機器メーカーのリースやクレジットが使えることがありますが、これらは金利が非常に高額であり、しかも支払いは毎月の出費額を増やす要素に繋がるので、これも慎重に判断すべき部分となります。

 

⑤「店舗工事費」

開業者が開業出店のメインとして認識している部分が「お店にかかる工事費用」ですが、ひとくくりに「店舗工事費」といっても、この予算組の中には、店舗デザイン設計費も含めた上で店舗工事の費用と考えましょう。

とかく、多くの開業者は、開業総額費用の殆どがこの店舗工事費と勘違いしている傾向がありますが、これは非常に危険な考え方です。開業総額全体のうち⑤の店舗工事に割り当てられるのは、50〜60%程度になってしまう事例が非常に目立ちます。ぜひとも注意しておきたいところです。

また、「④理美容機器」「⑤店舗工事費(お店作りの費用)」の2つを、いっしょくたにとらえている開業者も少なくありません。この勘違いも結果的に大きな予算不足のきっかけになりますので注意です。あくまでも工事は、大工ほか、各職人が現場で組み上げる為の材料、作業、運搬、などの費用です。そして、理美容機器は、完成した店舗に設置する“購入物”であるということを忘れてはなりません。

「工事を依頼したら安い見積だったから頼んだら、理美容機器は別料金っていわれた、これ普通一緒じゃないの?」

こうした開業者の発言は勝手な思い込みですので注意してください。

開業予算の考え方

具体的な開業の予算内容の詳細を解説してきましたが、このとおり開業総額は開業者毎に異なることを理解する必要があります。

まず、開業予算を考える際、最初に「自分がいくら用意できるのか」、すなわち自身で調達可能な上限額の把握が必要です。その上で、「用意できる範囲内で作れるお店は、どういったものか」を考えるべきなのです。

まずは、仮に「開業全体に必要となる総額が全部で1000万円以内でなければならない!」という絶対的な基準を守った上で、とりあえず「総額1000万円の予算配分上、お店作りの予算として、600万円はなんとか割り当てられそうだ。」というバランス感覚がなにより重要です。

仮に、この「⑤お店作りの部分」に、予算が全然わりあてられない、となった場合、あきらかに選んだ「①物件の初期費用」が大きすぎるとか、選んだ物件の規模が大きすぎたが故に、「④理美容機器」の台数の多さに伴い予算が肥大しているなど、確実に予算バランスが崩れているはずです。とにかくこうした、①〜⑤までの予算バランスをしっかり理解できてさえいれば、物件探しの段階から、対象物件が適しているか、再検討すべきか、判断基準が備わり正しく考えることができるようになるのです。

なによりも最も重要なのは、「開業総額」が、「自分が調達可能な限界額以内」であること。

多くの開業者が勘違いしている根拠のない危険な認識、この機会に見直してください。

「開業予算ってさぁ、店舗工事費500万と、余裕見てプラス200万円ぐらいあれば、できるだろう」

「店舗工事+運転資金をちょっと多めに用意しておけばなんとかなると思う」

「先輩がお店を700万で開業したって言ってた。だから俺も総額700万円で開業する」

…そんな感覚で計画進めたら、間違いなく予算足りなくなります。本当に気をつけて!

開業資金の調達方法

開業にあたり、「いくら用意できそうなのか」すなわち「自分が集められる上限額はいくらか」この基準は開業計画において非常に重要な基準となります。必ず以下の4つ以の資金調達以外の調達手段はなしで計画しましょう。

A.自己資金

ほとんどの開業者は、最初このように考えがちですね。

「自己資金がある程度なければ、開業そのものは、当然無理に決まってる」

「開業したい気持ちはあるけど、自己資金がまだ全然足りないと思う」

自己資金が少ないと開業は無理・・・こう思っている人は多いものです。

特に美容師、理容師の場合、実際開業時の段階で自己資金を500万円以上持っているとか、1000万円以上持っているという方は、それほど多くないのが現実です。

これも実例からお話ししますと、理美容師さんは、平均的に100万円から150万円の自己資金をもとに開業を果たしている実例が多いのです。

 

B.出資金

独立開業ともなると、最初のスタートが最も大変なわけですが、実例のほとんどは親族からの資金援助など「出資」の協力を受けながら開業していることが多いのです。

「親や親族の力を借りず、全額自分の貯金じゃないと、無能だと思われる・・・」

「両親からお金借りていることが、融資時の印象を悪くすると思う・・・」

こんな声もよく聞きますね。

特に美容師、理容師のように、技術職という自力で這い上がってきたような職人気質の開業者は、「人の助けは借りず、すべて自力で」という根性論的な視点で考える人が多いように思えます。しかし、実は、融資機関側は、他人からの援助にマイナスな印象を持っていません。

親族とはいえ大金を委ねて援助するという行為は、それなりに信用のある人物と判断され、むしろ融資を有利にするケースもあります。プライドは一旦脇に置き、独立開業時に限り、素直に援助を受けましょう。

 

C.日本政策金融公庫

ここからは公的融資です。創業の場合、理美容業に限らず融資は必要となります。その中で最も般的に利用されているのが「日本政策金融公庫」です。これは国からの融資であり、申込から実際にお金を借りるまでのプロセスが、非常にスムーズで利用しやすい借入です。

 

D.銀行融資

そしておすすめできる、もう一つの融資は、「銀行」からの融資です。ただし、この銀行からの融資は、申込から着金までのプロセスなどが異なり、日本政策金融公庫の融資に比べて、やや面倒な段階を踏んでいく必要があり難易度が高くなります。

銀行融資に関しては、別機関として信用保証協会の保証が必要となるため、融資自体の審査も銀行と信用保証協会の審査とダブルチェックが入る分、融資決定までの期間も日本政策金融公庫より長いという特徴があります。

とはいえ、銀行融資も日本政策金融公庫同様に、非常に金利が安く、開業を支援する目的を持つ融資であるため、開業の資金の一部として利用しない手はありません。

 

【注・リースやクレジット】

さて、注意すべきは「リース」や「クレジット」です。おそらく美容師、理容師であれば、「リース」や「クレジット」は、一度は耳にしたことがあるでしょう。

前述しましたが、これらは日本政策金融公庫や銀行融資と比べて、金利がとても高額なため、これから先の長い経営をしていく上で、毎月の出金の中に含まれる要素になり、毎月の出金を著しく増やす要素につながります。

先々売上額がどんなに多くても、出金額がそれ以上に多かったら、最悪の場合お店は潰れてしまいます。ここに大きく関与するのがこの「リース」や「クレジット」なのです。

したがって開業の資金計画に、これらを利用するのは非常に注意が必要だと理解しておきましょう。

 

<まとめ>

「開業資金の調達」 ≧ 「いくら用意できるか」

これは、「自己資金」「出資金」「日本政策金融公庫」「銀行」この四つのみで調達可能な上限の金額を、まず自分自身で把握することが最も重要です。

ただし、公的融資を含めたとしても、誰もが調達可能な資金には上限が存在します。

これは、「自己資金が多い・少ない」という問題だけでなく、「身内からの出資金が多い・少ない」によっても集められる上限額が、人それぞれ異なります。

とてもたくさんの資金を集められる方もいれば、ほとんど集められない方もいるはずです。

残念なことに資金調達に関しては、過去の「技術経験年数」「人気」「カリスマ性」などは全然関係ないのです。仮に十年以上の経験を持つベテランで、凄腕の美容師さんであっても、家庭の事情などで、どうしても資金調達ができないという方もいるはずです。

逆に、まだまだ修行中で美容師になってまだ日が浅いにも関わらず、たまたまお金持ちの両親が出してくれたお金があり、とても大きなお店を出せてしまうということもあるわけです。

この資金計画に関して、「自分はどれぐらいの資金調達ができそうなのか?」を把握することが開業計画の初期段階に必要なことです。

「いくら用意できるか」が把握できなければ、「いくらしか使えない」ということが把握できません。「いくら用意できるか」によって、開業出店の可能性や、自分が持てるお店の規模が決まります。本当に残念なことに、今までの経験、人気などは、「資金調達能力」とは無関係なのです。

開業計画に使える額面は、調達可能な限界額以内でなければなりません。調達可能限度額以上のことは絶対に不可能です。「調達限界額」が、「自分の開業の身の丈」になるのです。

まとめ

表題の【1人で美容室開業するために、必要な資金はどのくらいか?】という問いかけですが、実は非常に危険な疑問であることは想像できるのではないでしょうか?

独立開業に関しては、必要な資金の把握はもちろん重要であることは間違いありませんが、それ以前に、自分が集められる上限額をまず知ることが第一歩目です。どんなに素晴らしい計画性を頭に描いていたとしても、それを実現させるためには、それ相応の資金が必要となるわけですから、描いている計画が、もしも自分自身の調達可能額以上の規模の計画だったとしたら、それは文字通り“絵空事”であり、実現は不可能なのです。

確かに1人での開業なら、必要資金は最小限で実現可能なものではありますが、仮にその最小限の予算すら調達不可能なのだとしたら、やはり無謀な開業計画と言わざるを得ません。大切な基準は、まず自分の資金調達能力の把握です。大きな予算を確保できるけど、1人での美容室開業を目指すというのならもちろん可能です。しかし、開業を機に失敗してしまう開業者の多くは、その逆で、資金調達能力を遥かに超える開業規模を頭に描いて、準備不足のまま着手して失敗してしまう傾向があります。開業はできたけど、わずかな期間で退店という事例の多くは、こうした準備不足、予算の見立て間違いがほとんどです。そうならないためにも慎重に計画を立ててください。

著者:飯島由敬

ヘアサロン開業アカデミー代表
美容室開業プロデューサー

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