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【美容室開業】開業では「店舗工事費」の借入だけでは全然足りない!

多くの開業者は店舗開業の際、必要となる予算のほとんどは「店舗工事費」と捉えている傾向があります。この基準により融資に関しても、「店舗工事費を借りれば良い」と考えてしまいがちです。しかし、開業には店舗工事費以外にも想像以上に予算が必要となるもので、仮に店舗工事費だけに意識を向けた予算計画で進めてしまうと、まず確実に予算不足に陥ってしまいます。予算不足、それはすなわち開業直後に早速必要となる「運転資金」が一切残せないままの危険な経営スタートを意味します。どんなに立派なお店が完成し、来客に恵まれたとしても、初期の運転資金不足は、結局短命店舗の原因となってしまいます。まず「開業総額」は「店舗工事費の確保」だけでは、とても足りないということを十分に理解した上で開業計画に着手しましょう。

「開業総額」と「店舗工事費」決して混同しないこと

開業者から最初に相談を受ける際、まずはその方が考えている開業計画の概要を聞くことになりますが、そんな会話の中でこういう声を聞くことがあります。

「店舗の開業には、だいたい500万円ぐらい必要だと先輩に言われたので自分も500万の融資を申し込む予定です」

あるいは、これ、500万円ではなく、人によっては300万円という人もいましたね。いずれにせよ、300〜500万円前後の範囲で店が開業できると思っている方は、決して少なくなかったということです。こうした基準は非常に危険であるということは常々アドバイスしており、まず確実に開業予算が不足すること間違ありません。

まず、その前に、これらの開業者さんたちが言う『店舗の開業には・・・』とは言いますが、ほとんどの方が、これを『店舗の工事費』と混同している傾向があります。

少なくとも、「店舗工事費ってどれぐらいかかるの?」と聞かれるならまだしも、

「開業って、どれぐらいかかるの?」と聞かれると、それぞれの答えはまるで異なる次元のものとなるわけです。

そもそも、「開業総額」と「店舗工事費」これらはまるで別のものであることをしっかり把握する必要があります。

この認識違いだけで、先々の経営事情はとんでもないことになりかねないと捉えておくべきです。

開業を目指す理美容師さんは、つい、
開業にかかるお金 = 店舗工事にかかるお金

と、考えてしまうようですが、この2つは、開業計画において、根底から異なるものであることを理解しておく必要あります。

「店舗工事費」は「開業総額」の中に含まれる一部でしかない

前述のように、開業総額と店舗工事費は、別物であるというアドバイスをすると、多くの開業者は、

「それでは店舗工事の費用って果たしてどれぐらいかかるのでしょうか?」

という質問が引き続き返ってくるものです。このように「工事費の概算を」を問われる事は非常に多いのですが、まずはこの基準を整理するところから始めなければなりませんね。

確かに、開業において「店舗工事費」が最も大きな予算組となるのは間違いありません。

ただ、開業者にとって、「開業といえば店舗工事のお金がかかる」

と、それほどまでに「店舗工事」への関心にあまりにも偏っているといえるわけです。

 

まず、「店舗工事費」というのは、
あくまでも開業総額の中に含まれる、一要素にしか過ぎません。

例えるなら大きな樹の「幹」の部分が開業総額、「枝」が店舗工事費といった感じなのです。

したがって、独立開業=店舗をつくること、という安易なイメージは一旦払拭して、慎重に予算計画を立てることが安全な開業の第一歩となります。

店舗工事以外の費用も多く必要となるもの

開業総額では、大きく分けると5つの予算組が必要となります。
1. 不動産取得費
2. 開業準備金
3. 運転資金
4. 美容機器代
5. 店舗工事


■不動産取得費

不動産の確保に必要となる諸費用総額です。敷金(保証金)、礼金、仲介手数料、前家賃、家賃保証料、火災保険など。これは地域、立地によって額面は様々であることは想像できますね。都内の一等地であれば非常に高額で合計数百万円になることもあり、地方なら安価で数十万円程度で済むこともあります。とかく開業において、この不動産取得費により総額予算はを大きく左右される要素となります。


■開業準備金

店舗工事が終了し完成した店舗の内部に設置する様々な物品(家具、家電、装飾品、備品類など)を購入するための費用。また他にも、広告宣伝費、HP制作費、薬剤他初期仕入、施術道具備品の購入費。さらには、各種保険加入費、そして退職から実際に店舗が開業するまで働かない期間相当分の給与額、すなわち数カ月間の生活費もここ含めて確保しておかなければなりません。この開業準備金は、開業者それぞれの事情により必要予算はすべて異なり、一般的な平均額という基準で測れない部分となります。この開業準備金こそ、開業総額において予算の予測が最も難しい部分となります。とにかく事前に、詳細な出費リスト、買物リストを作成し事前に、しかも多めに予算取りしておくべき重要な予算要素となります。


■運転資金

開業後に僅かな期間で退店せざるを得なくなったり、開業直後から店に客は多く訪れているのに、走り出しの運営で経費支払ができずリタイアしてしまうような悲惨な事例の多くは、この運転資金をほとんど確保ができずにスタートしたこと原因になります。開業し、立派なお店が完成したにも関わらず、オープンした段階で手持ち資金ゼロという状況はとにかく最悪です。どんなに最低でも開業から2~3ヶ月程度の経費支払が可能となる「現金」を確実に残しておく必要があります。

運転資金が残せなかった原因の多くは、一つ前の『開業準備金』の出費要素の見落としがほとんどです。店舗オープンの直前まで、様々な消耗品や、細々した物品などの買物をしているわけですから、実は、最後の最後に手を付けて、削っていくのがこの「運転資金のお金」なのです。結局、事前に用意するべき買物予算の見落としが、最終的には、この運転資金を減らす要素に直結するのです。

絶対に残しておくべき現金こそが「運転資金」

それを一切手つかずに残すためにも「開業準備金」の詳細なリストアップが明暗のを左右する要素となるのです。


■理美容機器

カット椅子、シャンプー椅子、シャンプー台、促進器など、いわゆる機械類、機器類の費用です。これら機器一式の費用も、多くの理美容師さんは店舗工事費の中に含まれているものと勘違いしがちです。理美容機器はあくまでも、店舗に設置する物品、買物の一種なのです。「店舗工事には普通は理美容機器も入っているのでは?」これはただの勘違いです。注意しましょう。


■店舗工事費

そして、開業者が、開業総額と混同する要素「店舗工事の為の費用」です。

店舗工事は、壁、床、天井の建材はもちろん、照明器具、看板、電気設備、空調設備、給排水設備など、店舗区画内で繰り広げられる工事すべての合計額。各業種の大工や職人など現場作業の人件費、また、建材や材料、ごみ処理など、現場への運搬輸送費、車両費など・・・とにかく、ありとあらゆる店舗工事に関与する全ての要素の合計額が「店舗工事費」となります。

しかし、店舗工事が無事終了したとしても、これは中に何も設置されていないただの空の部屋なのです。

店舗工事終了直後、店内の商品が一つも並んでいない状態のコンビニを想像してみてください。

店舗工事が完成しても・・・

「店舗工事費だけの確保」では開業は実現できないのです!

あくまでも店舗開業に必要となる予算をすべてを確保した上で計画に着手できるもの。

それら開業総額・5つの要素のうち、「店舗工事費」は、たった1つの要素でしかないのです。

 

実際のデータとして、10~20坪の小規模な理美容室開業では

「開業総額」の中で「店舗工事」に割当てられる予算比率は約半分程度というのがシビアな現実です。

開業の為に、「店舗工事費を500万円だけ借りよう」という基準が、いかに危険であるかご理解いただけたでしょうか?

ぜひ気をつけて計画に取り組んでくださいね。

まとめ

  • 開業計画時、融資で「店舗工事費」を借りるという基準は危険。
  • 開業総額と店舗工事を混同しないこと。
  • 店舗開業に必要となる総額予算組は5つ。
  • 不動産取得費によって開業総額は大きく左右する。
  • 様々な買物予算「開業準備金」は事前に詳細なリストアップを。
  • 運転資金が残らない原因は「開業準備金」の見落とし。
  • 理美容機器の費用は店舗工事には含まれない。
  • 店舗工事は開業総額の半分程度である。

 

著者:飯島由敬

ヘアサロン開業アカデミー代表
美容室開業プロデューサー

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