美容室の独立開業で「一人経営」は失敗の元?10年後に後悔しないための選択
(イラスト:飯島由敬)
こんにちは。ヘアサロン開業アカデミーのbh飯島由敬です。
日々、多くの理美容師さんから開業計画のご相談をいただきますが、その中で圧倒的に多いのが「自分一人きりで運営するお店を開業したい」という要望です。
私自身、実際にこれまで数多くの「一人経営」の美容室や理容室の開業サポートに携わってまいりました。
小規模店舗ならではのノウハウも常にお伝えしていますが、一人での店舗運営を志す開業者の方が見据える未来というのは、とかく非常に近い将来のビジョンにとどまっていることが多いのが実情です。
独立開業の真の目的を達成するためには、まず、一人経営のメリット・デメリットを深く理解した上で計画を進める必要があります。
今回は、皆さんが見落としがちな「開業後の現実と10年後の未来」についての解説です。
noteでも詳しく
https://note.com/bh_iijima/n/nb59351bb6b10
少ない労働で多くの報酬を取ることは悪いことなのか?
「働く量をできるだけ減らし、報酬は多く取る」という考え方は、最低なことでしょうか?
特に技術系の職種である美容師さんや理容師さんからは、
「とんでもない!一生懸命に働いてこそお客様からお金を頂けるものだ」と反論されてしまうかもしれません。
実際、これは世の中の一般論として昔から言われ続けてきたことです。
長い間、技術畑で働いてきた理美容師さんは特に、こうした「労働の対価として報酬を得る」という基準が深く染み込んでいるはずです。
しかし、独立開業に向けて計画に着手する段階では、この既成概念を僅かながらでも変える覚悟が必要になります。
もし考え方を変えなければ、開業してから10年後も、以前勤務していた店と同じかそれ以上の負荷を掛け、ひたすら身体をすり減らす毎日を送ることになるかもしれません。
日々労働力の対価を得るだけのスタイルのまま、生活を続けることになってしまうのです。
一人きりの経営では将来の労働力を永遠に減らせない?
美容師さんや理容師さんの開業計画を最初にお聞きする時、次のような声が非常に多いものです。
「自分一人だけで運営する、小さな美容室(理容室)を開業させたいです」
しかし、このような最小限の規模の計画では、開業後にお店をフル稼働させたとしても、ずっと忙しすぎる日々から解放されないケースがほとんどです。
もちろん、開業前の職場の給与と比較すれば報酬は上がり、人間関係などのストレスも減るため、多少のステップアップは実現します。
ですが、開業から10年という長い期間で捉えると、開業者が最初に思い描いていた理想からは少し程遠い結果になりがちです。
体力の衰えが気にならないほどの余裕のある財力を築くなど、開業時から大きくレベルアップできていないことが多いのです。
一人きりの経営における受入キャパシティと売上の限界
たった一人での運営体制で開業を果たした場合、その先の発展がある程度の地点で止まってしまうという宿命があります。
自身がどんなに頑張って根性を見せたとしても、一人が対応できる施術数には物理的な限界があるからです。
実際の声として、「以前の職場では1日15人以上のお客様に対応していた」という理美容師さんでも、一人きりの運営になると「どんなに頑張っても1日10人は対応できない。せいぜい5人が限界」と言います。
つまり、15人対応できていた日々というのは、何らかのサポート人員があってこその実績だったのです。
予約受付、お会計、シャンプー、ドライヤー、お茶出しなど、同時に複数のお客様に対応できていたのは、別の人材がいたからに他なりません。何らかのグループ体制で臨んだ場合の売上額に、一人きりで到達することは到底不可能なのです。
根性気質の運営スタイルでは、自身の体力の限界がわからなくなる
一人きりで始めた開業者も、売上を上げるために一人でも多くのお客様を獲得しようと懸命に頑張ります。
しかし、一人きりの環境では、報酬を上げるためには自分の労働力も比例して増やすしかありません。
理美容師さんは、その職業柄か、とにかく根性があります。
長時間の勤務やその後の懸命な練習など、簡単に根を上げない素晴らしい頑張り屋さんが多いです。
しかし、その「性(サガ)」がある意味で身を滅ぼしかねません。
限界まで頑張ることで結果的に報酬は上がりますが、その代償として疲れ果ててしまいます。
しかも、この環境が何年も続くと、自分が疲れ果てていること自体に鈍感になっていくのです。
いつしか自分の身体の限界さえわからなくなり、体を壊したり病気になったりする原因を積み上げてしまいます。
最初からスタッフと連携する店のほうが「自由」を得るのが早い
一方、開業時点からアシスタントやアルバイト、パートなどを雇用し、小規模であってもグループ連携で運営を始めた開業者さんの場合はどうでしょうか。
開業から2~3年後、早い人であれば初年度から、以前の職場で感じていた不満を改善し、まさに「時間とお金の自由」を得ていることが多いのです。
理美容師さんならイメージしやすいと思います。
過去に多くの方にお話を伺いましたが、ほとんどの方が「新卒者のような未経験者であっても、アシスタントがいるかいないかで仕事の負担は大きく異なる」と答えます。
一人ですべてをこなすよりも、雑用などを手伝ってくれるスタッフが一人いるだけで、自身が施術対応できる客数は格段に増えるのです。
もし、開業時に採用した未経験のスタッフが数ヶ月で辞めてしまったとしましょう。
すると、この開業者は躊躇なく新たな人材確保に走ります。
未経験のスタッフを指導する精神的な負荷はあったとしても、
「一人で運営するより多くのお客様に対応でき、売上も上がる」という経営サイクルが習慣づくと、人材が欠員した瞬間に売上が下がる恐怖を覚え、人員補充を急務と捉えるようになるからです。
人材育成のストレスよりも、先々の売上を落とす危機感の方が勝るのです。
一人きり運営とグループ運営、それぞれの10年後の決定的な違い
過去の相談者や歴代の開業者からみた実例ですが、一人きりの運営で始めた開業者は、10年後も1人で運営を続けていることがほとんどです。
逆に、最初から人材を確保して臨んだ開業者の10年後は大きく異なります。
いつしか複数名の従業員を雇用し、開業時には想像していなかったほどの大きな売上を上げつつ、自身の労力には余裕がある状態を作り出しています。
豊かさ、やりがい、充実感に満ちたサイクルを送っていることが多いのです。
この決定的な違いを、開業前に想像できる人は多くありません。
「経営が軌道に乗ったら従業員の雇用も考えよう」というビジョンをよく耳にしますが、現実はほぼ実現しません。
一人での経営スタイルを何年も続け、その労力と報酬のバランスが「普通」になってしまうと、「わざわざ人間関係のストレスを背負ってまで人員を増やさなくても良いのでは」と考えるようになってしまうからです。
その結果、10年後もずっと一人で頑張り続けることになります。
世の中には「店主が高齢により閉店」という店もたくさんある
一人きりの運営か、協力者を加えたグループ運営か。
開業の段階でどちらを選ぶかの判断は、開業後1年目から決定的な差となって表れます。
10年後であれば、持ち前の気力で「いやいや、まだまだ現役だ!」と頑張れるかもしれません。
しかし、世の中の実態に目を向けてみてください。
古い街を歩けば、「店主が高齢により閉店」という貼り紙のあるお店がたくさん存在します。
もちろん、生涯現役という生き方も素晴らしいものですし、それも一つの人生です。
しかし、それがあなたの望む未来なのでしょうか?
何のための開業なのかを、今一度明確に!
開業を目指す際の「真の動機・目的」を忘れてはなりません。
最初の相談で伺う様々な不具合、不満、不安、不条理・・・
それらすべての「不」が、開業を目指すきっかけだったはずです。
突き詰めていくと、以下のようになります。
今までより報酬をアップさせたい!
家族との時間を増やしたい!
より良い労働環境を作りたい!
やりがいのある職場を作りたい!
その第一歩として独立開業し、いつかは従業員を雇う。
しかし、結局それが実現できていない人の方が多いのです。
その明暗は、最初からスタッフと連携する体制を作ってスタートを切ったか、それとも一人でスタートしたかの違いにあります。
ほとんどの開業者が抱く真の動機のトップ2は、
「今までより報酬をアップすること」と「労力を減らして家族との時間を増やすこと」です。
それなのに、開業後に労力は以前より格段に増え、報酬は変わらない(あるいは減ってしまった)
これでは、「そもそも何のために開業したのか?」ということになってしまいます。
まとめ:時間とお金の両方を手に入れるために
開業とは、自分の人生の効率化であり、大いなる変革をもたらす手段です。
抱えていた「時間とお金」における「不」を解消し、その両方をなんとかして手に入れるための挑戦なのです。
そして、その目的を果たせるかどうかに大きく関与するのが、「一人でやるか、グループでやるか」という選択です。
これから開業を目指す方は、自分が目指す未来を実現するためにどちらの選択が最適なのか、開業前にぜひ一度、とことん考えてみてください。
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