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美容室開業店舗に必要な設備

店舗の良し悪しは内装のグレードだけではない

店舗工事でどれだけ予算がかかるか?これは多くの美容師さんの素朴な疑問でしょう。よく高級な内装、カジュアルな内装、シンプルな内装・・・といった具合に店舗を感覚で良い店、悪い店を判断しがちです。

このように内装重視の基準での物件選びはとにかく危険です。

美容室には様々な設備が必要なのです。
内装のグレード以前に、美容室を作る以上、美容室の仕事がスムーズに行えるための諸設備が絶対条件として必要になります。内装ばかりを気を向けすぎて、様々な設備の過不足を招いてしまっては問題です。

美容室は電気容量が多く必要

美容室は通常の事務所やブティックなどの店舗より格段に電気容量を必要となります。

美容師さんなら想像できるはずですが、繁忙期に入れば店の施術椅子すべてが満員になることもあります。各席で一気にドライヤーを使って施術する時間が重なるとブレーカーが落ちてしまうこともありますよね。ドライヤーは非常に電力を使うものですから、同時多発で使用するような場面では、ブレーカーが落ちたりしないかと、ヒヤヒヤするのではないでしょうか?

選んだ物件に電気容量どれだけ供給されているか?

物件選びをする際には、この電気容量が物件そのものにどれだけ供給されているかどうかを事前にチェックすべきです。物件を探す段階ではこの電気容量の事をまるで考えずに、イメージだけで物件を決めてしまう傾向があります。

後々、物件に電気容量が足りないことが発覚したら、結果的には電気容量アップの為に多額の出費が発生してしまいます。

電気容量を上げることが出来ない物件もある?

電気容量は、物件に引き込まれているブレーカー30Aを40Aに容量アップするという単純なものではありません。

物件によっては電力を一切増やせない。あるいは、増やせても想像以上の費用を要してしまうこともしばしばです。

最悪の場合50万円相当の予算流出となることもあるのです。これは建物に余剰容量が残っていれば簡単に容量アップが可能なのですが、もし残っていない場合は、個別に外部から電力を引き直さなければならないわけです。仮に1F店舗で外部には電柱が並んでいるような町であればよいのですが、地域によっては電力が地中埋設地域といって電柱がない町もあります。当然、後者の方は電力アップにかかる費用がかさむわけです。

美容室では空調設備のパワーも大きなものが必要

美容室は、ドライヤーの複数利用はもちろん、時には大人数が同じ店舗にいることになるわけですから、

空調(エアコン)も一般的なものではパワーが足りません。

また、空調は物件にあらかじめ設置されているか、あるいはされていない物件もあります。当然エアコンが存在しなければ、開業者さんの予算で新しく設置しなければなりません。

空調設備の検証は特に注意

エアコンは非常に予算がかかるもので、エアコン本体以上に予算をとられるのは設置工事費です。

この設置費は対象物件によって費用のかかり方は様々です。室外機置き場が3階の屋上に置く必要があれば、設置費はおのずと増大しますし、店のすぐ横に設置できるようであれば少なく済みます。

物件に空調設備が設置されていたとしても注意

選んだ出店物件にエアコンが存在していたとしても慎重な検証が必要です。

まず、区画内に設置されているエアコンが物件の付帯物なのか?それとも残置物なのか?
これは非常に重要なチェックポイントです。

付帯物とは、大家さんの所有であり、故障したら大家さん負担で修理してくれます。
しかし、残置物なら、壊れたら修理費は入居した開業者さん負担となります。

一見、物件にエアコンが残っていれば、店舗工事予算が安く抑えられると思われがちですが、特に残置物だった場合は危険性を慎重な判断をすべきです。
店舗が完成し、最初に訪れた猛暑の夏に、もしもエアコンが故障したらどうでしょう?この時の修理費、あるいは修理不能で新規入れ替えを余儀なくされたら、それは開業時
エアコンを新設するよりも多くの費用がかかってしまいます。

残置物とは、いわば前入居者が残していったもの。それを引き継いだものの1年未満で壊れてしまうようでは大問題に発展するのです。

もし物件に設置されているエアコンが残置物ということでしたら、とにかく深い検証して開業後の対処法も想定しなければなりません。
物件選び時の簡単なチェック方法は、前入居者が何年前に設置したものなのか?どんな業種で営業していたのか?これらを事前に不動産屋さんに確認してみることです。仮に元飲食店で焼肉屋とかお好み焼き屋だったとしたら、迷わずエアコンは新規で入れ直す事をおすすめします。また、一見きれいな状態のままだったとしても、設置した時期が15年前のエアコンということだった場合、すでに修理するための部品が廃盤になっており修理不能となることがほとんどです。

空調設備の新設は物件の状況によっては100~200万の流出に繋がることもあるのでとにかく十分な注意が必要です。

空調設備のパワーに注意

仮に物件に大きなエアコンが付帯物として設置されていたとしても注意です。

エアコンには馬力というエアコンそのもののパワーが異なります。

もしも元事務所だった物件だとしたら、美容室の熱量をまかなうほどのパワーがまるで足りていないこともあります。その場合、別にエアコン増設が必要となることもあります。美容室はドライヤーの熱量、人間が発する熱量など、エアコンにおいても、通常より大きめのパワーを要する業種であるということを把握しておきましょう。

ガス設備

美容室店舗を出店する以上、このガス設備も重要なポイントです。給湯設備(ボイラー、湯沸器)を導入することは必須となるはずです。しかし、その為の

ガスが引き込まれていないと、これまたガス設備を外部から引き込むための予算がかかってしまいます。

昨今、物件によってはオール電化のためガス設備が建物内に引き込まれていないこともあるのです。

こうした場合は、都市ガスを店舗区画内に個別に引き込んで良いかどうか、大家さんの判断を仰がなければなりません。もしも引き込み不可となれば、給湯もすべて電気容量でまかなわなければならないのです。すると、前述した電気容量はなおさら多くの確保が必要となります。

ガス設備は都市ガス?プロパンガス?

その他、ガスに関しては、前述したオール電化の建物の事情とは別に、

地域によっては都市ガスではなくプロパンガスを使わなければならない等、大家さんの指示によって左右されることもあります。

特にプロパンガスに関しては、都市ガスに比べ、毎月の経費を大きくする要素にも繋がるため、収支面に影響を及ぼす一要素となります

水道・給排水設備

美容室の出店で最も深刻な影響をおよぼしかねないのが、給排水設備です。
シャンプー施術の際、水圧が出ない

特にこの水道供給の問題は、実際に美容室運営店が大きな悩みとして抱えているものです。

この水圧問題は、物件区画内に引き込まれている水道管の太さが関与しています。一般的に水道管が13mmあるいは25mmといった具合に外部と物件区画内をつなぐ水道管の直径です。もしそれが13mmと細ければ慢性的に水圧が出ないのです。もし出店対象の物件が13mm供給の水道管だった場合は、おのずと水圧問題に苦しむことになってしまいます。

一方25mmであればこの水圧問題は解消されると考えて良いでしょう。これは物件以前に建物が建築された際に作られたもので、もしかしたら一般事務所の入居を対象にして水道管は13mmで設置されていたという背景があるかもしれません。大家さんがいつしか美容室にも貸し出すことになったものの、それを調べる術を持っていない美容師さんが入居し、開業後運営が始まってからその不具合に気づき、常に悩み続けているというわけです。

仮に物件選びの際、事前に気づけたとしても、

水道管の組み換え工事は時として100万円以上の莫大な費用に達してしまうもあります。

水道管が13mm供給だった場合は、美容室出店には要注意な物件だと捉えても良いぐらいなのです。

給湯設備(ボイラー、湯沸器)

前述した水道管が細い場合の対処法としてボイラーの設置があります。

ボイラーとは、いわば大型冷蔵庫相当の大きさの水槽タンクと考えてください。細い水道管から一旦そのタンクに水を一定量貯めて、常にお湯を沸かしてくれるものです。シャンプー施術などで水量が減ればリアルタイムで水を補充し、常に沸かし続けてくれるのです。このボイラーの導入により、水圧問題が解消されるわけです。しかし、このボイラーは高額でモノによっては70~100万円相当の予算を取られてしまうものです。

一方、美容室で多く使われるのが業務用の瞬間湯沸器です。

これはボイラーに比べ予算が半分以下で済みます。水道管が25mm供給の物件であれば、ボイラー導入の検討をすることなく、湯沸器でまかなうことができるのです。とはいえ、美容室ではシャンプー設備を複数設置することもあり得ますので、湯沸器をツイン(2台)設置することがおすすめです。
仮に湯沸器が2台になったとしても、ボイラー導入より格段に安く済みます。

さて、ボイラーであっても湯沸器であってもガス供給がほしいところです。

ですがどちらもガスではなく電気対応のものもあります。

もしも、ガス引き込みが許されていないような物件が出店対象なら、その分さらに多い電気容量の確保が必要となるということをお忘れなく。

美容室必要な設備・まとめ

この様に、美容室出店の為には、内装イメージばかりにとらわれるのではなく

電気設備、空調設備、ガス設備、給排水設備、給湯設備

これらをバランスよく多角的に検証しなければなりません。

どんなに店舗の工事費用を多めに確保していたとしても、これら諸設備の過不足を美容室仕様に整えるためにほとんどの予算が割かれてしまうことにもなりかねません。

選んだ物件がどんなに好立地、好物件だと思えたとしても、

肝心要の諸設備が美容室向けのものか?この疑問を持って検証するべきでしょう。

仮に美容室向けに確保する予算が莫大にかかってしまうような物件だったとしたら、内装イメージを司る演出要素に使える予算が無くなってしまうかもしれません。

多額の費用を掛けた割に、どうにもショボイお店となってしまった。

これは店舗工事費用の大半が設備に使われてしまった結果かもしれません。

物件探しには、物件の設備事情に真剣に目を向け、とことん検証すべきものなのです。

著者:飯島由敬

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