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店舗デザイン設計の依頼は料理のオーダーと同じようにせよ!

私は通算20年以上にわたり店舗デザイン設計者として生きてきましたが、大量に携わった店舗設計時の経験を振り返ると、最初に発注者から聞き取るリクエストって、さながら料理のオーダーに似ていると常に思っていました。単純に「今日は肉が食いたい」と言われても、牛?豚?鶏?虎(笑)なのか…具体的に聞かなければ要望に応えることなど永遠にできませんよね。設計時「かっこいい店にしてね」とか「とりあえず、君のセンスで設計提案してみなさい」みたいな曖昧すぎるオーダーに対し、どんなにプロの立場で手腕を振るっても、空振りに終わる…そんな苦い経験、幾度もあったものでした。しかし今の立場で当時を振り返れば、これ、発注する側に問題あったとしか思えないのです。店舗デザイン設計のリクエストは本当に食べたい料理を発注するような感覚がお手本なのです。

店舗デザイン設計時のリクエストは、料理のオーダーと同じ??

かなり昔になりましたが、SMAP×SMAPという番組の中で、ビストロスマップというコーナーがありました。

毎回超有名タレントが訪れ、SMAPメンバー達に食べたい料理をオーダーする。

彼らは2チームにわかれ、極上の料理作り提供し、競い合う。

 

さて、この時タレントの注文を聞いていると

「鶏肉料理!」とか

「チーズを使った料理!」

「鍋料理!」

「魚料理!」 etc…

このように、非常に漠然とした発注をしていること多いと思いませんか。
そんな曖昧な発注を受け、SMAPはかなり本格的な料理をつくるわけですが、よく見ているとオーダーしたタレントは、果たして本当にその料理が食べたかったのだろうか?と疑問に感じることがありました。

出された完成品は、本当に欲しかったものなのか?

出てきた料理は本格的な鶏肉料理。

たとえば究極の「鶏肉とカシューナッツ炒め」

だが、想像するにゲストのタレントはカシューナッツに関しては苦手だったのでは?

一体何の話?と言われそうですが、

これ、店舗デザイン設計の際、開業者が欲する世界観を伝え方と非常に似ているのです。
「木に囲まれた雰囲気で」

「金属が好き」

「レンガが好き」

「リゾートが好き」

「古民家も好き」 etc…

自分の欲しい世界観をプロであるデザイン設計者に複数伝えれば、きっとキャッチしてくれるだろう・・・こう捉えがちですね。

 

ところが、完成してみたものの

「なんかイメージが違うんだけど・・・」

最後の最後で開業者さんは不満足な様子。

 

もっと明確にリクエストしなければ欲しいものは手に入らない

いくらプロのデザイナーや設計者(料理人)といえども、

もっと明確にオーダーして貰わないとどんなに腕を振るっても、満足させることなどできるわけがないのです。

例えば料理なら、

鶏肉のちょっと辛めのグリルが食べたい。

ガーリックはNG。ブラックペッパー味で。

どちらかといえばもも肉より胸肉の方が好き。

香草類は大好き。 etc…

たったこれだけ掘り下げるだけで、料理すべきメニューの具体的な方向性が見えてくるはずなのです。

どんなに優秀な設計者でも、発注者のオーダーがしっかりしていないとダメ

店舗もまるっきり同じことが言えるのです。
「木に囲まれた雰囲気にして欲しい」

これだけだと解釈によっては・・・

森の中心にいるような世界観を作られるかもしれない

ログハウスのような世界観かもしれない

檜風呂のような世界観かもしれない

腕の良い店舗デザイン設計者に頼めば、きっと素晴らしい店を作ってもらえる?

いやいや、きちんと開業者が正しくオーダー(発注)出来るかどうか方がずっと重要なのです。

料理であれば、子供の頃お母さんに食べたいものをお願いする時の基準と似ていますね。

店舗の「木の世界観が好き」これは「肉が食べたい」というのと同じぐらい漠然とした注文だということです。

店舗デザインなら、「自分は何が欲しいのか?」を詳細に伝えることです。

英国調のアンティークな雰囲気の世界観にしたいのです。

ハリーポッターの映画に出てくる図書室みたいなイメージが近いです。

これってたくさんの木に囲まれた感じですよね?

伝統的な佇まいを感じられるという意味では、ちょっと風化した木をふんだんに使ってもらうことが理想です。

照明もやや薄暗い方が好きです。音楽はクラッシクが流れている様な雰囲気で。

 

最初の段階でこのように伝えれば、その後は、まるっきり的外れな提案はないはずです。

店舗デザイン設計者(料理人)の腕だけに頼るのではなく、自分の欲しいモノを、出来る限り細かく、超わがままに、とにかく伝え切ることこそ理想を手に入れるカギなのです。

(画:飯島由敬)

 

 

著者:飯島由敬

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