【美容室開業】サロン運営にレジスターは必需品か?
美容室や理容室を開業する際、多くの開業者は、今でもレジスターの購入を検討する傾向があります。
しかしこのレジスターなるもの、新しくお店を立ち上げる際、今でも必ず買うべき必需アイテムなのでしょうか?
お店は、当然レジがなければ成り立たない・・・
このような根強い感覚があるようですが、昨今、実際の理美容室開業において、こうした昔ながらのレジスターを導入している事例は年々減ってきています。
現在主流となりつつある、現金以外の決済方法の普及に伴い、各種電子決済、カード決済などは、まさに普通のことになりつつありますね。
それでも開業者さんは、店のレセプションカウンターにはレジがないとしっくりこないと感じてしまうようです。
まずは、レジスターそのものの役割、種類、そして、自分自身が構える店舗の規模やスタイルに応じ、本当にレジスターは必要なものなのかどうかを冷静に考えてみましょう。
そもそも、レジスターは何のために必要なものか?
まず最初に、レジスターの役割・機能に関して一度、頭を整理してみましょう。
施術が終わって、会計時、お客さんからお金をもらう際の動作をイメージしてみてください。
- まず、いただくべき金額をキーボードにピッピッって打ち込み。
- ガシャーンってキャッシュドロアが開く。
- この時の額面入力は、引き換えに渡すレシートや領収書の発行の為であったり、あるいは、自分の店の入金伝票としてストックできるものだったりします。
- そして、客からの支払は現金で受取り、キャッシュドロア(※)にお金をしまう。
※[紙幣や硬貨を分けて収納する仕切りがついた引出状のもの。一般的なレジスターは、額面を入力するキーボード状のものとこのドロアが一体化したタイプのものが多い。]
一連の流れはこんな感じでしょう。まぁ誰でもが昔ながらの店のイメージがあり、レジカウンター周りには、これが置いてあり、店員さんがいつも小気味よくピッピッピッってキーボードを打ち込む。これ、思いっきり当たり前の光景ですね。
さて、長年、私はヘアサロンの開業に寄り添って沢山の方々をサポートさせていただきましたが、
最初歴代開業者のほとんどは開業時に用意する必需品として「レジスターを購入します」といいます。
まぁ、「入れたい」というより「だって、無ければ困るものでしょう!」という基準の人がほとんどでした。
しかし、実際に開業した方々を振り返ると、
実例ほとんどの実例ではレジスターは導入しなかった事例が圧倒的に多いのです。
毎回、その都度、私は開業者に、「なぜレジスターが必要だと思うのですか?」と聞くと・・・
「え?だって・・・ん?・・・あれ?・・・なんででしょうね?・・・レジスターって、無くても良いものなんですかね・・・」
となるわけです。
そうなんです、よくよく追求していくと、導入する必要性が、開業者自身、わからずにいる人ばかりだったのです。
なぜレジスターが必要なのか?
それがわからないままに、世の中の多くの開業者はレジスターを購入してレセプションカウンターに、所狭しと鎮座させている傾向が強いのです。
そして、やがて数年後「レジが置いてあるから、カウンターが狭くてね・・・」
という後日談さえ聞こえてくることもあるのです。
さてさて、冷静に考えてみましょう。そもそもレジスター・・・いりますかね?
ほぼ毎回、この問答を開業者さんとディスカッションしていくと、
ほとんどの人は「確かに、私の店には、いりませんね!」という結論に達します。
これは私が誘導しているわけではなく、開業者自身の決断で、そうなるのです。
もちろん中には、レジスターそのものが大好き!お店として雰囲気を司るのに絶対欲しいもの!というのなら話は別です。
演出物として入れたいという人もいましたしね。
自身の満足アイテムとして導入した開業者さんもいました。
したがって、自分の店にとっての必要性の基準を十分理解の上での導入なら、それはそれで全然OKなことです。
過去最も多く導入してきた、おすすめのレジのスタイル
これは歴代開業者だけに限らず、多くの理美容師さんの実体験や実例として多く聞いてきた声から思うことです。ただし、これはあくまでも私個人のおすすめのスタイル、一意見としてご紹介しますね。
それでも、実際に私が開業サポートした実例のほとんどは、このスタイルでレジの機能を構築してきました。
開業時、あくまでも
一般的なレジスターを導入せずノートPCを購入し、そこにレジ機能を伴う専用アプリをインストールし、別でキャッシュドロアのみを購入。
これにより
レセプションカウンターの上部は常に広々と使えるようになります。
そして、ノートPC自体に、レジ機能、あるいはサロンPOSの様な顧客管理システムを伴うアプリをインストールして構築するのが最も多かった実例となります。
すべてPCが従来のレジ機能を担うようにさせるというわけです。
ただ、現金決済の際にいただくお金のストック場として、
キャッシュドロアだけはどうしても必要となります。
安いものなら1万円未満で購入可能で、キャッシュドロア単体のみを用意し、これは客から見えないカウンターの下段部分にひっそりと設置するわけです。
これ、メチャクチャ、スッキリすること間違いないんです。
しかも結果的に一般的なレジスターより、格段に高機能に使いこなすことができるわけです。
サロンPOSってどんなもの?
予算面が、かなりタイトなのが、はじめての独立開業計画です。
多くの開業者は前述した、「ノートPC」&「顧客管理アプリ」&「キャッシュドロア」の組み合わせによる構築がほとんどでした。
ただし、それ以外に、もっとプロ仕様の顧客管理システムを伴う「サロンPOS」を最初から導入する開業者ももちろんいました。
さて、この『サロンPOS』とはどんなものでしょうか?
これに関しては、一言いえば『顧客管理システム』とか『POSレジ』と表現してしまうことが多いのですが。
前述の安価なアプリより、もっと専門性が高く、多機能な管理ができる優れものです。
何がそんなに優れものかといいますと
集計機能があり、日々の売上集計の作業に時間を取らない。支払いの履歴が正確に残る。すべての客の入出金状況の履歴、来店頻度のチェック、店販品の在庫管理ほか全売上の管理機能がメチャクチャ高機能、そして客へのDM作成機能が付いていたり・・・またそれらのデータがクラウド上で保存できたり、PCでの管理以外にタブレット端末にも連携させられる拡張性もあったりとか・・・
とにかく盛りだくさんのメリットがあります。
ただ・・・便利なPOSレジですが、
導入コストがやや高額になるということ。
また多機能ゆえに「じゅうぶんに使いこなせなかった」という声も少なからず聞くことがあります。
さて、それほどまでに便利なサロンPOSですが、傾向として、
顧客管理システムの導入を最初から検討する開業者は、まずほとんどが開業前の旧職場でこのサロンPOSを使っており、日常的にその便利さを思いっきり経験してきた人たちです。
まず、サロンPOS無しでの運営は考えられない!というほどその有効性を知っている人たちということです。
一方、逆も同様で、
旧職場でサロンPOSなど一度も使ったことがない、という開業者は
「それ何?必要なの?」という基準で、正直なところ、見向きもしない・・・
「私は、普通のレジスターを買う!」と発言するような傾向となるんです。
ちなみに、このサロンPOSですが、大半の開業者は、「POSレジ」という言葉から連想し、
巨メチャクチャ巨大なレジスターをイメージしてしまうことが多いようです。
最近のサロンPOSの主流は、すべてPCのにインストールするソフトウエアであり、こうしたスーパーマーケットで見かけるような巨大なレジの様相ではないことを知っておきましょう。
ほとんどの場合、
ノートPCの中に「サロンPOS」が導入(インストール)されるものが今のスタイルであると捉えましょう。
↑最近のサロンPOSはこのような巨大なものではない!
たしかにこんなにデカイのがあったら、キツイですよね・・・
ご自分の店にふさわしいレジ機能のスタイルを選びましょう
とにかく、レジスター?というより、レジ機能に関しての導入スタイルに関する、
選び方のポイントは、予算をはじめ、ご自分の開業条件に合わせて最適な方法を選ぶことです。
まず、自身が開業する予定の店の来店人数頻度によっても、望ましいシステムは変わります。
レジ構築の選択で大事な基準は、とにかく自分の店舗の規模なのです。
たとえば、大きめの規模の店舗で開業する場合は、来店人数、取扱商品の在庫数、そして雇用する従業員、それぞれが多くなり、おのずと多機能を備えたPOSレジなどを導入する必要性も、価値も出てきます。
しかし店舗面積が10坪〜15坪程度のような小規模店舗での開業ならば、日々の来客数も、管理すべき物販品の種類や分量も、なにもかもが大型店とは異なり、少なくて済むはずです。突き詰めていくと、多機能なサロンPOSを導入するまでもなく、比較的安価アプリでもじゅうぶんに管理可能という判断にもなるわけです。
確かに、導入に高額なタイプのものなら、多機能ゆえの「大は小を兼ねる」となるわけで、小規模店舗でももちろん役に立つのは間違いないでしょう。しかし、場合によっては、仮に数十以上もの役に立つ機能があるのに、その中の1〜2個しか使いこなさない・・・というようなことにもなりかねず、宝の持ち腐れ状態となるかもしれません。
とにかく導入検討には、まずは機能をよく吟味しながら、何ができて何ができないのかを十分に確認し、自分の開業では、果たしてどのレベルのものが必要か?大切なコスト面と照らし合わせながら慎重に検討しましょう。
レシート、領収書を自動で印字する機能は必須?
同じく開業者の最初の声で
「領収書を頼まれる事があるので、領収書発行が可能なレジスターを買うべきでは?」
例えば、安価なレジスターの場合、レシートや領収書が印字できず、ただ数字を打ち込むキーボードと、キャッシュドロアだけの簡易的なタイプとなりますが、予算が厳しい開業者は、このような最低ラインのものしか購入できないこともあります。
その場合、領収書は自動で出さず手書きで作成して渡すことになりますね。
これ、一見面倒くさいことになると思われますが、ちょっと視点を変えて考えてみましょう。
実は手書きの領収書とは、世の中のあらゆる商業施設に置いて、とても高額な商材を扱い、ハイレベルなレジの導入も可能な程の店であっても、あえて手書き領収書を発行していることもあります。
たとえば、由緒正しい温泉旅館やシティホテルなどでは、従業員が書いたカーボンが付いた複写式の領収書を、専用の小さな封筒に入れてお客様に手渡しする。こんな光景、今でもよく見かける場面だと思います。
美容室、理容室でも、仮に高級路線の店舗で極上の時間を過ごしてもらった客が最後の会計時に、このように手書きの領収書で対応をされても、あまり違和感は感じないものなのです。
むしろ、カリスマスタイリストの店という
格式的な雰囲気の中、手書きの一手間に好印象を抱く客もいるかもしれないのです。
逆に、昨今主流のレジ機能から自動的に印字されるレシート状の領収書だった場合、見方によっては非常に味気なく、「はいよ!」って手軽に渡されるような、いわば重みを感じない、格式なんてあったもんじゃない、というデメリットにもなるということです。
仮に高級路線店舗とする場合、
1日に大量の客を対応せず、少人数に対して高額なサービスを展開するようなスタイルのヘアサロンなら、むしろ、安価なレジスターなどは全く不要であると考えられるのです。
おしゃれな金属のトレイに現金、あるいはカードを受け取る。そして領収書も丁寧に書いた手書きのものを洒落たカードケースのような封書に入れて渡す。店のスタイル次第では、この方が演出として効果的になることもあるというわけです。
レジスターは、もはや必要ないもの?
レジスターには、まさにピンからキリまで。
レシート印字もできず、ただ、キーボードとキャッシュドロアが付いている超安価なものから、さまざまな機能を搭載したサロンPOSなど、とにかくラインナップは数多く存在します。
たしかに、売上管理や商品管理、顧客管理など全てが一つに集約されていると非常に便利で、多機能ゆえの恩恵は確かにあるでしょう。
しかし誰でも開業そのものの規模が異なりますし、開業の予算組もまさしく十人十色なのです。
中には、たった一人で運営するような小規模サロンを目指す開業者もいることでしょうし、数年計画で拡大を視野に入れた、従業員を複数抱えるような中型店〜大型店を目指す開業者もいるでしょう。
これら、
自身の計画性や、構える店舗の規模に応じ、導入するレジ機能の判断基準を検討すべきなのです。
導入しようと考えるレジ機能に、
「果たして、そこまでの利便性が必須なのか?」
すべては、ここがポイントになります。
電子決済が普及してきたとはいえ、まだまだ現金による決済が存在する現在では、キャッシュドロアの必要性がゼロになることは、まだ考えにくいですね。
しかし、昔ながらの一般的なレジスターは、
最も安いタイプのものなら、ただキーボードの付いたキャッシュドロアでしかなく、機能の割にやたらと場所を取るものでもあります。
昨今、特に理美容室では、カウンター上には、コンパクトなノートPCやタブレットが一つだけ、オシャレに置いてあるだけで、見た目も、機能面も、昔ながらのレジスターより格段に優れた機能と演出性を高めてくれます。
在庫や売上管理はパソコンやタブレットに低価格のソフト・アプリを入れるだけでも対応できます。
領収書やクレジットカード決済に関しても、レジがなくてもいくらでも方法があります。
想定来店客数や取扱商品数などを踏まえて、レジスターの購入の必要性に関して考えてみましょう。
今回のアドバイスは全て、すでに開業して10年〜20年と経営をしている実際の理美容師オーナーさんたちの生の声から得たものです。
「レジスターはお店の必需品である」という基準を、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。
まとめ
- お店の会計にはレジスターが当たり前という感覚が根強い
- おすすめのスタイルは「ノートPC」+「顧客管理アプリ」+「キャッシュドロア」
- サロンPOSは多機能で便利だが、出店規模や開業予算に応じて検討すべきもの
- 領収書やレシートの印字の為にレジスターが必要という考え方も見直してみるべき
- 現代の電子決済の普及により店の会計システムは過去とは異なる。すべては自身の必要性次第で検討すべき
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