自分の美容室を開店するまでの開業の流れは、大きく分けて8つのプロセスに分けられます。
- [開業手順1] 開業動機と目的の明確化
なぜ独立して美容室を開業するのか?改めて自問自答 - [開業手順2] コンセプト構築
コアターゲットを想定して社会的役割を明確にする - [開業手順3] 事業計画
収支・採算性のチェック、資金調達方法、実行予算想定 - [開業手順4] 物件探し
ターゲットの往来、居住に応じた物件選び - [開業手順5] 融資
足りない資金を調達する - [開業手順6] 運営戦略
集客や売上を増やすための作戦を立てる - [開業手順7] 店舗デザイン
店の雰囲気を大きく左右する、デザインの決定 - [開業手順8] 店舗工事
内装から設備まで、店が完成に近づく重要なプロセス
では、それぞれの手順について、詳しく解説していきましょう。
[開業手順1] 開業動機と目的の明確化
「なぜ独立して美容室を開業するのか?」を自問自答
あなたが開業を願うのはなぜでしょうか。
いろいろな理由があるでしょうが、それをひとつひとつ書き出すなどして、整理してみることが大切です。
Point!! 単なるあこがれや夢だけでは不充分です。
繁盛している美容室や、マスコミに登場する華やかな美容室を見かけるとうらやましくなるもの。
「自分もああなりたい」と感じることは全然悪いことではありません。
ただ、漠然としたあこがれだけでは開業しても成功しません。開業してどうなりたいのか?そこをよく考えてはっきりさせることが大切です。
- どんな美容室を目指すのか?
- よその美容室との違いは何なのか?
- どんなお客さんに主に来てもらいたいのか?
これらすべてをあいまいなまま進めていくと、コンセプトが不明瞭なために早期閉店につながります。時間を惜しまずに、細かく決めていくべきです。
店舗開業の動機について、典型的な例をいくつか紹介しましょう。
① 金銭上の目的
(例)現状より、もっと報酬をほしい
美容室の開業で大きな動機として出るのが「収入」です。
美容師として技術を磨いてお客さんに認められ、カリスマと呼ばれるようになっても 雇われているままでは、収入はなかなか伸びないものです。
この「今より、もっとお金が欲しい」という動機は、正当な動機です。ただ、「今よりもっと増やしたい」といった不明瞭なものではなく「何年でいくらまで増やそう」などと明確な目標を立てる必要があります。
② サービス上の目的
(例)理想とするサービスをお客様に提供したい
雇われ美容師の場合は、勤務する美容室の方針に従わないといけません。しかし、その美容室や店長のやり方に共感できないという不満を持つ美容師さんは多いものです。
たとえば美容室の方針で、必ず安価な薬剤を使わなければならないなどの決まりがあり、その薬剤のせいで炎症を起こすお客様を目にして「安全な薬剤を使ってあげたい」「お客様にあった薬剤を使ってあげたい」といったサービス面での要因が生じることもあります。このような要因も、独立を考える動機の一つです。
③ 勤務時間・勤務体系上の目的
(例)拘束時間や職場の環境を変えたい
勤務体系も、収入と同じく雇われ美容師さんがよく不満を感じる点です。
■勤務時間・・・美容師の世界は残業がとにかく多いものです。拘束される時間が長いわりに、待遇に反映されないという傾向があります。
■休日・・・休みが少なかったり不規則だったりと、休日に関する不満を抱える美容師さんもたくさんいるはずです。
また、お客様だけでなく「一緒に働く仲間にとっても幸せな環境を作ってあげたい」といった動機も考えられます。

このような「なぜ、私は独立をしたいのだろう」「今の職場の何が不満なのだろう、どうしたいのだろう」というポイントを考えることが、あなたが開業したい美容室の原点になります。
[開業手順2] コンセプト構築
コアターゲットを想定して社会的役割を明確にする
コンセプトという言葉は様々な意味を持つ言葉ですが、美容室の開業においては「コンセプト=社会的役割」だと捉えることが大切です。
「社会において、どんな役割を果たす美容室なのか?」この点をはっきりとさせるべきです。
そこが固まれば
- どんなお客さんを集めるのか?
- 集まったお客さんに、どんなサービスを提供するのか?
どちらも自然と、見えてきます。
提供サービスとコアターゲット
ここで役に立つのが、先ほどご説明した「現在の店に対する不満」および「どんな目的で開業するのか?」です。
たとえば「今の店と違って、安全な薬剤を提供する店にしたい!」という場合なら?
→「お肌のトラブル等のリスクを抱えたお客様に、心から安心して通っていただける美容室にする」という提供したいサービス(社会的役割)を明確化します。
そうすると、客層もおのずと見えてきます。それを更に細かく、「性別は?」「何歳くらい?」「どのような社会的な地位?」「どのような家族構成?」などと想定していきます。そうしてコアターゲットを確定させます。
店舗イメージ=空間コンセプト
コンセプトやコアターゲットが決まったら、それを提供するためにベストのロケーションや、店舗イメージ(空間コンセプト)が見えてきます。
あくまでも「理想客(コアターゲット)が最も喜びそうな店構えを追求すること」が重要です。
コンセプト構築は、考える順番が大切
社会的役割が決まれば、コアターゲットが決まり、店舗イメージが決まってきます。

店構え先行でコンセプトと捉えてしまうと、自分が最も来てほしい客が好きな空間ではないかもしれません。
[開業手順3] 事業計画
収支・採算性のチェック、資金調達方法、実行予算想定
事業計画を立てるときは、収支をできる限り正確に計算しないといけません。
店舗の資金にしか目を向けない方も多いのですが、それだけでは不充分です。
以下の3点を慎重にシミュレーションする必要があります
- いくら稼ぐのか? (収支計画)
- いくら用意できるのか? (資金計画)
- いくら使うのか? (実行予算計画)
1.いくら稼ぐのか? (収支計画)
~開業して赤字になるリスクを無くすための収支の正確なシミュレーションを
最初に、収支計画は月間単位で計算します。
【入金】
まず、月当たりの総売り上げを計算してください。
[技術売上]
これに関しては、「客単価×毎日の来店客数×月間営業日数」で計算できます。
[店販売上]
シャンプーやトリートメントなどの物品販売があります。
これらの売上は開業者それぞれの基準で想定することになります。
例:「技術売上✕◯%」
【出金】
次に、経費の総額を計算します。
材料費や光熱費、賃料や人件費、債務や広告宣伝費……と、さまざまな目的で経費が発生するはずです。
【利益】
そして、最後に引き算
【入金】 ― 【出金】 = 【利益】
その【利益】がマイナスになるようであれば、赤字を意味します。
2.いくら用意できるのか?(資金計画)
~資金繰りをどうするか? 自己資金から融資の利用まで
どれくらいの資金を用意できるのか、こちらも冷静に考えてみましょう。
資金繰りに関して考えられるのは以下のとおりです。
①自己資金
いわゆる、預貯金等です。
②借入金
日本政策金融公庫や銀行などのような公的な機関を利用するのが一般的です。
[家族や友人等に借りるという個人融資という考えもありますが、この場合は「③出資」の部分へ]
③出資・投資
美容室のコンセプトや事業計画を評価してくれる投資家を探すという手もあります。また最近はクラウドファンディングでお金を集めるという手も使えるかもしれません。
あるいは、もっとも身近な親や家族、友人などからの支援や出資を利用する方も多い。
(親族からの出資の場合、融資機関側は、これを自己資金とみなしてくれる場合も多い)
3.いくら使うのか? (実行予算計画)>
~見落としのない事業計画を立てよう
開業する際に必要となる費用をリストアップして、すべての予算配分バランスを把握する作業です。
店舗確保のためにかかる費用や備品の購入費用、開業からしばらくの期間の運転資金ほか、非常に多くの費用が発生します。

最も重要なことは、実際の実行予算総額が、融資を含め自身で準備可能な資金総額を、絶対に上回らないようにすることです。計画の事前段階でもしそれが、オーバーしてしまいそうな場合は、計画を大幅に見直さないといけません。
[開業手順4] 物件探し
ターゲットの往来、居住に応じた物件選び
必ず、コンセプト(社会的役割)とコアターゲット(理想客層)を明確にできた段落で、はじめて物件探しの作業に入るものだと考えましょう。物件探しは、絶対に焦ったり、早まった判断をせず、自身のコンセプトにぴったりと合致するような物件に巡り合うまで、粘り強く探すことが重要です。
コアターゲットを集客しやすい物件を手に入れるために
現在は、店舗物件を探す方法がたくさんあります。その中でもいちばん使いやすいのは、やはりインターネットです。現在ネット上の物件情報は詳細に掲載されますし、情報の更新も迅速に行われてとても便利です。
物件の情報の中で価格情報は当然のことながら非常に重要です。まずは開業したい場所の周辺が果たしてどれくらいの家賃相場なのかを把握しつつ、念入りに情報収集しましょう。

賃料についての判断基準
「坪単価」をまずチェックしましょう。ちなみに1坪の広さは約3.3㎡(畳2畳分)です。一般の開業者は馴染みが薄い表現かもしれませんが、不動産業界ではこの基準が使われています。物件探しをしながらこの基準に慣れていきましょう。
店舗をピックアップしたら必ず下見を
物件を絞り込んで、「良いな」と思えたら、必ず現地に出向いて実際の目で確認をしてみてください。店舗の内部については、広さ・高さから設備まで、じっくりと入念に観察するべきです。
また、周囲の環境もじっくりと自分の目で見て確認する必要があります。
「人通りが多い」「商店街に面している」「駅前である」……この程度では不充分です。
「ターゲットとするお客さんが周囲に多いのか」「求めるお客さんに、店に気づいてもらえそうか」……そのような着眼点でチェックすることも重要です。
また営業時間中の周辺状況がどのような感じになるのかの確認は非常に重要です。
通勤通学や買い物客の往来で、とても店前の環境が乱されるような物件だった場合、後で後悔することにもなりかねません。
特に、よく知らない地で物件探すような物件の場合は、必ず朝、昼、晩と時間帯を変えて、それぞれチェックすることをおすすめします。
[開業手順5] お金の準備
足りない資金を調達する
美容室の開業において、大きな難関となるのが「資金調達」です。
まず自己資金だけで開業できるような事例は極めて少ないです。したがって、足りない資金は融資などで調達する必要があります。
ところが、この最初の資金集めができないまま開業してしまうと、運転資金がゼロの状態、あるいは大きなマイナス状態から経営を始めることになりかねません。
これでは開店初期の段階から美容室経営が成り立たずに、僅かな期間で退店に追い込まれてしまう危険性が高まります。
開業にあたり、「いくら用意できそうなのか」すなわち「自分が集められる上限額はいくらか」この基準は開業計画において非常に重要な基準となることを理解しておきましょう。
必ず以下の4つだけの資金調達手段で計画しましょう。
A.自己資金
「自己資金がある程度なければ、開業そのものは、当然無理に決まってる」「開業したい気持ちはあるけど、自己資金がまだ全然足りないと思う」
ほとんどの開業者は、最初このように考えがちで、自己資金が少ないと開業は無理だと思っている傾向があります。
美容師、理容師の場合、実際開業時の段階で自己資金を500万円以上持っているとか、1000万円以上持っているという方は、実際、さほど多くないのが現実です。
過去の実例からお話ししますと、理美容師さんは、平均的に100万円から150万円の自己資金をもとに開業を果たしている実例がとても多いです。
B.出資金
開業実例の多くは親族からの資金援助など「出資」の協力を受けながら開業しています。
「親や親族の力を借りず、全額自分の貯金じゃないと、無能だと思われる・・・」「両親からお金借りていることが、融資時の印象を悪くすると思う・・・」
正直、こんな声もよく耳にします。
特に美容師、理容師のように、技術職という自力で這い上がってきたような職人気質の開業者は、「人の助けは借りず、すべて自力で」という根性論的な視点で考える人が多いように思えます。
しかし、実は、日本政策金融公庫や、銀行の融資機関側の見解としては、他人からの援助に対し、それほどマイナスな印象を持っていません。
親族とはいえ大金を委ねて援助するという行為は、それなりに信用のある人物と判断されている証です。
したがって、むしろ融資を有利にするケースもあるのです。
職人特有のプライドは一旦脇に置き、独立開業時に限り、甘んじて素直に援助を受けることをお勧めします。独立開業ともなると、最初のスタートが最も大変なわけですから。
C.日本政策金融公庫
創業の場合、理美容業に限らずどんな業種でも融資は必要となるものです。その中で最も一般的に利用されているのが「日本政策金融公庫」です。
これは国からの融資であり、申込から実際にお金を借りるまでのプロセスが、非常にスムーズで誰もが利用しやすい借入手段です。
D.銀行融資
おすすめできる、もう一つの融資は、「銀行」からの融資です。
ただし、この銀行からの融資は、申込から着金までのプロセスなどが異なり、日本政策金融公庫の融資に比べて、やや面倒な段階を踏んでいく必要があり難易度が高くなります。
また、銀行融資に関しては、別機関として信用保証協会の保証が必要となるため、融資自体の審査も銀行と、信用保証協会の審査と、2機関におけるダブルチェックとなる分、融資決定までの期間も日本政策金融公庫より長いという特徴があります。
とはいえ、銀行融資も日本政策金融公庫同様に、非常に金利が安く、開業を支援する目的を持つ融資であるため、開業の資金の一部として利用しない手はありません。

【注・リース】
さて、注意すべきは「リース」です。おそらく美容師、理容師であれば、「リース」は、一度は耳にしたことがあるでしょう。
前述しましたが、これらは日本政策金融公庫や銀行融資と比べて、金利がとても高額なため、これから先の長い経営をしていく上で、毎月の出金の中に含まれる要素になり、毎月の出金を著しく増やす要素につながります。
先々売上額がどんなに多くても、出金額がそれ以上に多かったら、最悪の場合お店は潰れてしまいます。ここに大きく関与するのがこの「リース」なのです。
したがって開業の資金計画に、これらを利用するのは非常に注意すべきです。
[開業手順6] 運営戦略
集客や売上を増やすための作戦を立てる
実際の運営戦略は、開業後に考えるのでは遅すぎます。オープン後に、じっくりと作戦を練る時間の確保は非常に困難なのです。仮に、ゆっくり考える時間があるようなら、それは店が暇であるということですね。
しかし、その状態で練る戦略は非常に平常心を欠いた状態となります。それほどまでに運営がスタートの初期段階は冷静な戦略を立てられる精神状態ではいられなくなっているはずです。
すべては開業前、すなわち開業計画段階にしっかり確立しておくべきものと考えましょう。
客単価や店名
価格や店名は、いったんオープンしたら簡単に変更はできないものです。特に価格の変更は今後の運営の方向を大きく変えるかもしれず、労働量の割に利益が上がらないような仕組みを定着させる危険性も含み慎重に設定すべきものです。最悪の場合、客離れの原因にもなりうる要素ですので慎重に考えましょう。
客単価
客単価は、高すぎても安すぎてもいけません。
目的とするターゲットを踏まえて、競合店の価格を調べたりして、妥当な金額を探り出すことが大切です。
また、特徴となるサービスなども考えて客単価を設定する必要があります。
なによりも重要なことは、運営上しっかり利益が得られるような価格設定を意識する、すなわち収支面、採算性を追求する意識が最も重要です。
店名
店名は、なんとなく・・・という安易な命名をして後々、「なんだか違ったかな・・・」と思えたとしても簡単に変えるべきものではありません。
たくさんの利用客の方々に愛される美容室を育てていくにあたって、店の名前はとても大事です。
呼びにくい名前や長すぎる名前をつけてしまうと、なかなか覚えてもらえません。
将来出会う客が、初めて店名を聞いた時、そのお店が目指していることがなんとなく想像できたり、店名の音象(音の響き)が、柔らかい感じとか、爽やかな感じとか、リズミカルな感じとか・・・
また、電話応答の際に店側が発しやすいこと、また客側が聞き取りやすいこと、この両面が非常に重要です。
姓名判断の専門家に相談するなどコストや手間暇をかける方も少なくありません。
とにかく店名は安易に、適当に付けるものではなく、「経営者の思い入れ」と「親しみやすさ」「コンセプト」などを考慮し魂を注入するつもり命名するものと認識しておきましょう。
開店のお知らせとPR/費用対効果の高い宣伝手段とは
美容室を開くとき、店舗の準備と並行して進めなければならないのが、集客の準備です。選べる手段には、主に次のような種類があります。
①有料のWeb広告
Webは、誰もが日常的に利用するメディア。美容室関係の情報もWeb上に大量に出回っていますね。
たとえば、美容室の情報を大量に収録しており、ユーザが簡単に地域の美容室を検索できるサイトに、自身の美容室を掲載できたらかなりの宣伝になるでしょう。
割引等のサービスを併設しているサイトであれば、自然とネットユーザが集まりますし広告効果は総統に期待できますね。
しかしこのようなサイトを使う際は、デメリットがいくつもあることを知っておくべきでしょう。
- 使い続ける限り、決して安くない料金を要求される
- 割引を通して集客していると、収益面で不利になる
- 広告を中断したとたんに、客が減るという不安を抱えてしまう
……etc.
したがって有料のWeb広告に頼ることのメリットデメリットを考えて利用するかどうかを検討すべきです。
②チラシの配布
チラシはどちらかといえばアナログな広告手段です。
時代遅れだというイメージも強いかもしれませんね。
確かに、1回や2回ではなかなか効果を実感できなくても不思議ではありません。
しかしチラシには、次のようなメリットがあります。
- 近隣の住民に的を絞って集客できる
- 店の周囲にリピーターを増やすきっかけになる
また、チラシには直接の広告効果以外にも、自分自身で集客をしているということによる自信と近隣の状況を把握ができるなどの感覚を身につけることにも繋がります。
ただし、チラシを見ただけで、訪問というわけには行きません。
現在では、チラシを見て興味を持ったら、そこからホームページをチェックするという流れが主流です。
あくまでも、チラシは自社のサイトへ誘導するための一つの手段として捉えることが大切です。
③SNSやブログの活用
有料広告やチラシなどの手段で、ホームページへ誘導しても、そこでしっかりとした情報発信をしていないと、意味がありません。
店舗情報や価格などの基本情報はもちろんですが、SNSやブログを使って、様々な情報を発信し続けることが重要です。
ヘアスタイルや機材・薬剤などにまつわる情報だけでなく、プライベートな情報や近隣の飲食店や雑貨店など開業者自身がお気に入りのお店情報なども発信していきましょう。
やがて読者たちが、そんな開業者の美容室に行ってみたいなと思ってもらえるような個性的な情報を発信することが、継続的な集客効果にもつながってきます。
[開業手順7] 店舗デザイン
店の雰囲気を大きく左右する、デザインの決定
美容室を開くなら、自分自身の思い描いたコンセプトにぴったりの店舗デザインや内装デザインを実現したいところですね。ところが、建物や店舗に関するデザインや設計に専門的な知識や経験を持つ美容師はなかなかいないでしょう。
デザインや工事の段階で失敗を避けるために、注意したいポイントをまとめました。
店舗の内装デザインと工事、同じ業者に頼むべきか?分けるべきか?
「デザイン」と「工事」は必ず発生しますが、両方ともに一手に引き受けてくれる業者はとても多く存在します。
このようなデザインと工事を1社にまとめて依頼したほうが良いのでしょうか?
「両方一括で任せたほうが、時間面でも費用面でも得だ」……と、つい考えてしまいます。
しかし、もしも工事の見積に誤り、見落とし、欠点があった場合、開業者の基準では、それを検証できないはずです。
それよりも、工事を請負業者の見積を、その会社と別に依頼したデザイナーと一緒に検証でするようにしたほうがあらゆる面で適正を追求でき、不具合やトラブルを格段に減らすことができます。
どんな人物に依頼したらいい?デザイナー(または設計者)の選び方
デザイナーの使命は、「目指す世界観(デザイン)を実現化するための製作図(設計)の作成業務」だけだと思われがちですが、それ以外に「店舗デザインを工事業者に正確に実行させる人物、オーナーの代理人業務(監理)」が重要な役目となります。
工事の専門知識が無い開業者さんが、工事業者にシビアで適切な指示を出すのは不可能です。
「デザイナーを、開業者さんの知恵袋、工事業者の監視役、お目付け役として任命する」という基準が、人選する上で考慮すべき点です。
[開業手順8] 店舗工事
内装、外装、諸設備etc…店舗完成までの重要なプロセス
自分のイメージに合わせたデザインが決まり、工事用に図面が作成され、はじめてそれを実際に現実化する工事に入ります。施工内容に応じた工事金額の積算は非常に重要な判断基準となります。
入札(相見積または競争見積)で慎重に業者を選ぼう
店舗工事費用が開業総額の中で最も大きな予算となります。
したがって、複数の工事業者に見積を依頼し、最も安い額面を提示した業者を選び出すべきでしょう。
ところが実際に複数の業者からの見積書を受け取っても、書かれている内容、専門用語の数々の適正や妥当性は開業者にはまず理解できないはずです。これは専門的な知識を持つ人物でないと理解できません。
だからこそ、工事業者とは別に依頼したデザイナー(設計者)に、その役を担ってもらい専門的な目線で厳しく査定をしてもらうべきなのです。
工事中にありがちな、周囲とのトラブルを防ぐには?
美容室に限ったことではありませんが、建物や商業施設の工事がはじまると、周囲に思わぬ被害を与えてしまうことがあります。
たとえば工事の最中の騒音や、振動は周辺には想像以上にストレスを与えるものです。実際の苦情の原因は多岐にわたります。
工事が原因による開店前に周囲との間に軋轢を起こしてしまうと、その後の経営に大きな支障をきたしかねません。工事の開始前に、周辺への挨拶や工事のお知らせ等、事前に近隣の理解を得ておくことは非常に大切です。
開業後に後悔しないために電気・ガス・給排水設備には要注意!
美容室店舗には電気設備や給排水、ガス、通信設備など、さまざまな設備が欠かせません。
これらの設備の過不足は今後の運営上、非常に致命的な要素となります。
実際に開業してから設備の不備に悩む美容室の事例を非常に良く耳にします。
電気容量不足(理美容室を運営するのに最低限必要な容量が物件に存在しているか)
物件を決める際に、立地や周辺の雰囲気だけではなく、この電気容量が建物に十分備わっているかを必ずチェックすべきです。
容量が著しく足りない場合は、建物内から余剰分の電気容量を賄えれば良いのですが、もしも建物自体に余剰分がない場合は、新たに外部から電気容量を増設する必要があります。こうした費用は数十万円に達するので、選ぶ物件に電気容量が十分に足りているかどうかは非常に重要なのです。
また、開業後によくある事象として、電気回路の不備(ドライヤー使用中に、ブレーカーが頻繁に落ちる原因)があります。これは、実は設計の問題で、特に美容室の設計経験がない人物に設計させると、電気の回路の組み方など電設設計ミスを起こし安く、意外とよくあるトラブルです。
したがって設計者を選ぶ際は、最低でも理美容室の設計経験をしっかり持った人物を人選すべきと心得ましょう。
水道の不備(シャンプーの最中に、水圧が著しく下がってしまう原因)
もちろん、これも選んだ建物の構造上、設置や改善に限界がある場合もあります。こうした問題も、事前チェックなしで安易に物件を選んだことが原因となることが多いのです。
選んだ物件の区画内に外部から引き込まれている水道管が太いものか、細いものか、このチェック一つで、こうした不備は未然に防げるのです。
電気に関しても、水道に関しても、だからこそ、物件選びの基準を最低限理解しておくことが重要なのです。
自分が仕事を依頼するデザイナー(設計者)や工事業者が、美容室店舗の経験不足だったことが原因による様々不備が生じてしまったという事例をたくさん見てきました、それほどに少なくない事例であるということを知っておきましょう。

このようなトラブルを防ぐには?
重複しますが、最低でも美容室の実例経験が多いデザイナー(設計者)や、美容室店舗を多く手掛けてきた工事業者を選ぶことを絶対条件と考えましょう。
単純にデザインのセンスが良さそうだとか、色々な業種の店舗工事実例が多い業者だから、おそらく安心だろうと捉えるのは非常に危険です。デザイナー、設計者、業者を選ぶ際はそれぞれ、過去の実績をよく聞き、美容室対象の業務に精通しているかどうかの確認は非常に重要です。
[まとめ]
美容室の開業では、最初に必ず「動機・目的」を明確にする必要があります。
それらを十分に踏まえて、美容室の「コンセプト」や「コアターゲット」の絞り込みに取り掛かります。
次に、「採算性すなわち収支計画」と共に「融資を含む開業総額の検証」これら動機目的〜開業総額のシュミレーションまでをひっくるめて【事業計画】と考えましょう。
この事業計画をしっかり立ち上げた上で、はじめて「物件探し」の段階に進められるのです。決して物件探しから計画スタートするのではなく、その事前段階は、まず事業計画からであることが、なによりも重要です。それが美容室開業に成功する秘訣です!
事業計画に基づく出店対象の物件を決めたら、ここからが、開業計画の【実行段階】となります。
物件決定後は、一気にお金の流出が始まります。そこから店舗OPENまで、ノンストップで着実に進めていく必要があるのです。
まず、物件決定直後に起こす行動が「資金調達、すなわち融資の申請」となります。以降、店舗完成までの行程を、スムーズかつ確実に進められなければ最悪の場合は、開業自体が実現できないまま計画倒れしてしまう危険性もあります。
このオープン前、計画途中段階で躓いてしまう例は、意外と多く存在するのです。とにかく全行程、正しく順序どおり、抜かり無く攻略していかないと、容易に不具合が生じる危険性をはらんでいるのが、開業出店計画の非常に恐ろしいところなのです。
開業で成功するためには、全要素において熟慮と慎重な判断が必要不可欠です。
目次