【美容室開業】女性一人だけの経営を目指した独立開業で心しておくべきこと
女性の美容師さんで従業員を雇用せずたった一人きりでの経営の美容室開業出店を目指す方は非常に多いですね。私の開業相談でもとてもたくさんいらっしゃいます。もちろん、女性一人だけでも立派に開業し順調な店舗運営をして活躍されている方もたくさんいらっしゃいますが、もしそれを本気で臨むのであれば、やはり最初の段階での心の準備といいますか、あらゆる想定をしながら覚悟を決めて進めていかなければなりません。せっかく開業したものの僅かな期間でリタイヤ、あるいはある程度運営はできたとしても、わずか数年で継続できなくなるようでは問題ですよね。一人きりでも先々長年継続させていく為の将来設計も含め計画した上で着手すべきです。過去に携わった実例を紹介いたしますので、ご自身の開業計画を見直す機会としてぜひ参考にしてみてください。
一人きりでのヘアサロン運営は売上額に限界がある
女性美容師さんが一人きりで将来従業員の雇用もしない開業相談を受けることがあります。
この場合、事前にわかっておくべきこと、想定しておくべきことがあります。
まず、一人きりでの運営では月間100万円以上の売上を上げることができないということ。男性美容師さんより、開業時から常に変わらないサイクルで業務がこなせなくなる可能性が高いこと。
私は常に開業から10年以上の運営を前提とした独立開業を呼びかけていますが、
サポートした数ある女性ひとりだけの美容室開業事例の中で、出店から10年間を迎えることなく退店となった事例が過去に一件だけありました。
この事例に関しては決して経営不振により退店したのではなく、別の理由がありました。
一人きり運営を目指した開業したある某女性美容師さんの実例
この女性美容師さんの実例は、
独立開業以前の計画段階から生涯一人きりで運営していく店を持つことを目指した計画でした。
この美容室は開業から丸8年間とても好調な運営を続け地域でも大変人気の美容室として知られるほどで、とても多くのお客さまたちに愛される開業オーナーさんでした。開業前の段階で28歳だった彼女は「私はこの先ずっと結婚しません。生涯一人で生きていくための店を今のうちに!」と言っていたのですが、月日の流れにより考え方も変わり、やがて、縁あって美容師さん以外の一般会社員の方とご結婚されました。
もちろん結婚した後も変わらず順調な運営を続けていましたが、ちょうど開業から8年目にさしかかった頃、やむを得ず彼女はお店を退く決心をしたのです。理由はおめでたいことに、妊娠したことでした。この出来事に、彼女は当時大変悩んだらしく、悩み抜いた末、出産を機に出身地である遠方に帰り一般主婦として生活していくことを決意したしたそうです。
この時の彼女の決断はもちろん大変悩んだ上でのものだったと思いますが、子育て専念と両親の元に帰るとこと決め、運営が絶好調だった店を手放し、知人ではなく、まるっきり他人の美容師さんに大好きだった自分のお店ごと譲渡することにしたのです。
開業出店のプロデュースをきっかけに、彼女の開業後も折りに触れ交流が続いていた私は、開業から8年後、退店直前のお店のお別れ会にも招待されました。
このお別れ会は、地元のたくさんのお客様、彼女の友人知人がたくさん集まる想像を超えるほど盛大なものでした。
お客ゼロから始めたこの美容室でしたが、8年前には想像できなかったほど多くのお客さまが集まり、開業オーナーさんとの別れを惜しんでいました。中には本気で泣いている方もいらっしゃって、彼女はお客様に愛されていたんだなと感心させられました。
「お店辞めないで!・・・これから私はどこの美容室に行けばよいの・・・」
熱烈なファンとなったお客さまは一人ではなく何人もいて、本当に彼女の人気の凄さに圧倒されました。
このお別れ会は、とても感動的なものでした。
たった一人きりでの運営ではなかった場合はどうだったか?
出産を機に退店。そして里帰り。これは、当時もちろん彼女自身の最良の決断でした。
しかし、「もしも・・・」を想像してみましょう。
もしも、8年間の中で彼女が従業員やパートなどを育てグループ体制の運営を視野に入れて行動していたら?
もしも、彼女がスタート時から技術者から離れマネージメントという立ち位置になることを意識していたら?
想像するに、結果は異なっていたかもしれません。
たとえ遠方に帰った後でも子育てをしながら何らかの形で店舗存続の方法は得られたかもしれないのです。
実際にお別れ会で、彼女にこれまでの8年間の売上事情を伺ってみました。
開業初期の数ヶ月は当然のことながらそれなりに苦労はあったそうですが、数ヶ月後、軌道に乗ってからは、ひと月も欠かさず毎月70~75万円の売上げを落とすことなくずっと続けてきたとのことでした。この売上は運営中のほとんどの期間、落ちることもなく、上がることもなく、常に安定した売上額面だったそうです。もちろんこの売上額は、このお店の収支、採算性から考え、一人きりの運営において、非常に優秀な実績といえるものでした。
一人だけの開業でもそれなりの成功はあるけれど・・・
このお別れ会の日に、私は彼女にふと質問してみました。
「無理してお客さまをさらに詰め込んで対応したら、もっともっと売上は伸ばせたんじゃない?」
「いや、これ以上は絶対に無理でしたよ。これ以上お客様を受け入れたら、私は絶対に身体を壊してしまったと思うし、お客さまへの施術がいい加減になっちゃったはずです。だから希望があっても、予約受けてあげられないことも時折あって、お客さんに申し訳ないと思うことはよくありました・・・でもまぁ私は、基本的にこの売上額で十分満足でしたから・・・だから無理してこれ以上の客数に対応する気もありませんでした。結果的にこの8年間、本当に楽しく運営させてもらいました。」
私は、彼女以外にも女性一人だけでの運営スタイルの開業事例に何件も携わってきました。
一人だけの運営による売上の限界ラインや、体力的な負荷に関して、毎計画ごとに同じ質問を投げかけてきたものですが、どの開業者さんも答えはみんなほぼ一緒でした。特殊技術、高額商材など、特別な戦略を持った運営ではなく、いたって普通の、一般的な美容室運営の開業計画の場合、
一人だけの運営で月間100万円を超える売上をもたらすことは、無理であると捉えておきましょう。
まとめ
これは男性、女性に限らないことですが、開業時には、まるで想定していなかった事情に直面したり、様々な環境の変化により当初目指していた希望どおりに行かないこともあるのです。ただ、男性に比べて決断の重さといいますか、やむを得ない事情に直面する質が異なることを想定しておいてほしいのです。女性の場合は、特に出産などの素晴らしい人生の分岐点において経営そのものの路線変更や、軌道修正が、男性美容師さん以上に影響を受ける可能性が高いということです。
この女性美容師さんの実例のように、不本意ながらも運営を継続できなくなった・・・という苦渋の選択を迫られることもあり得るということなのです。
女性ひとりだけでの開業を決して反対しているわけではありません。女性1人のみでの独立開業を目指すなら、こうした実例を参考に、あらゆる想定、リスクなど、まずは様々な変化の準備をすることが非常に重要だと思うのです。
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