仮に一人きりでの運営で、カット、カラー、パーマのフルセットのお客様を対応する場合、
1日上限5名の受入が限界だと話す理美容師さんに、よく以下のような質問を投げかけます。
「施術人数1日5名が限界と言いますが、もし新卒で未経験な人材であってもアシスタントが一人いたら最大で
何人ぐらいまで施術対応人数が増やせそうですか?」
答えは、
「未経験の全然使えないスタッフであっても、現状より1日2~3名は多く対応できるようになる」
未経験者でも1人雇えば、施術対応人数が増やせる?
となると、前述した計算式に当てはめてみると?
客単価¥10,000✕1日対応客数8名✕営業日数25日=¥2,000,000
単純計算ですが、1日対応人数5名限界と言っていたのに3名増やせることができたなら、売上は¥750,000増やせる計算となります。
何も技量が足りない人材に給与を払っても・・・自身の報酬は格段に増えちゃうじゃないですか!
だったら迷わず雇うべきではありませんかね?
実は・・・
開業時から従業員雇用した店のほとんどは1年以内に月間売上100万円を必ず超える傾向があります。
一方、開業後1年経過したら従業員を雇用しようという計画をしていた理美容師さんは、実際に3年後、5年後の段階になっても、一人運営のままであることがほとんどなのです。しかも・・・月間売上100万円を超えられないまま過酷な環境で一人運営で頑張っていたりするのです。
ではなぜ、いつまでも従業員を雇用しないのでしょうか?
ここにも、美容師さん特有の技術者気質が関与しています。
一人運営で開業し1年後、身体を駆使しながらも、なんとか70万円の売上をあげられるようになってきた頃の心境で想像してください。
実は、この段階では従業員雇用に対し、開業当初よりも格段に恐怖感が増大しているはずです。
まだ開業1年間を超えたあたりでは不安定な運営事情の中でしょう、ここで従業員の増員は当然、給与支払が新たな出費であり、恐怖のほうが勝ってしまうのです。
結局、しばらくの期間はこのまま一人で頑張ってみようという基準になってしまいます。
日々ハードで長時間に及ぶ仕事を長年経験してきた理美容師さんは、持ち前の気質で今まで以上に頑張ってしまいます。
理美容師さんは元来根性的気質があり、もっと頑張ろうという体育会系、アスリート気質ながんばり屋さんの癖を持っていますね。
これは、美容師さんの素晴らしさでもあり、反面、危険な部分でもあるのです。開業1年間、一人運営を経験してしまうと、やがてそれが習慣化し、それが”通常”になってしまい、緩めることができず、無理なペース配分に順応してしまうわけですね。
結局3年経っても、5年経ってもずっと一人運営を続けてしまうのです。
やがていつの間にか、一人運営の70〜80万万円ぐらいの売上状況で、自身の葛藤に折り合いをつけ、それなりの満足をして、とかく何年経っても変わらず一人運営をしていたりするのです。しかし、10年後には、体力も気力も少なからず低下してくることは避けられませんよね。実際に従業員雇用のタイミングを逸したことにより切実に悩んでいる年配理美容師さんの相談も聞くことがありますのでね。開業歴10年以上でも年を重ねた理美容師さんの軌道修正はかなり深刻な問題でもあるのです。
そんな、先人たちの切なる苦い体験を活かし、これから開業を志すなら10年後の自分のために・・・
スタート時点から従業員と共に運営をしていくグループ体制を視野に入れた運営を検討すべきです。全ては将来のため、運営開始時からチーム連携の運営スタイルを癖付けしていくべきです。
確かに従業員を一人前に育てていくプロセスはとても大変なことです。普段の労力より格段に大変で、とても神経をすり減らすことでしょう。また、最初に雇った従業員が変わらずずっと自分のそばにいてくれるかも疑問です。ですが、仮に従業員が何度入れ替わろうがそれで良いのです。最初から従業員を雇い、運営を始めた開業者さんは、仮に途中でその従業員が辞めてしまっても、必ず長い期間を空けずに再び従業員を補充するようになります。運営のスタート時からグループ連携を体感した以上、従業員なしで売上を効率良く上げることが不可能であることを深く理解するからです。
従業員を一生涯面倒をみるとか、ずっと自分の店に居てもらいたい、という基準にこだわらず従業員が何人入れ替わろうが、それすらも想定内と捉えて、臆することなくチャレンジするべきです。2人目、3人目と従業員雇用を経験していくと、いつか従業員雇用の大切なエッセンスを身に着けている自分に気付くでしょう。従業員との関わり方、扱い方、モチベーションの上げ方、距離のとり方など、やがて従業員のとの関わり方が上手な経営者になるはずです。もし離脱していく従業員がいたとしても、未熟な経営者である自分はまだ、
従業員教育という新たな仕事において、自分が初心者だっただけの話です。
多くの従業員との関わりから学び、従業員の意気を上げたり、他店よりも少なからず待遇の良い雇用環境など、従業員が喜ぶ上手な雇い方や環境の作り方を実体験の中から得ていくのです。そして、やがて育った有能な従業員たちは、いずれ自分の為に協力をしてくれるようになります。
一人運営をしていく場合、病気で3日間寝込んだら、その3日間の売上は文字通りゼロです。
でも一日も早く従業員との連携を取り、共に店を盛り上げていければ、従業員もやがて技量を上げスタイリストとなり、遂には自分の分身として、病欠した時でもフォローしてくれる頼もしい人材になります。そして経営者の3日病欠でも、従業員さえいれば変わらず収入が途絶えない運営体制が得られます。
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